ガモウニュースVol.107 表紙撮影の舞台裏 上原 健一氏(Rougy)

Making Cover LookNov.25.2022

今年最後のGAMO NEWS、テーマは『Cinematic』。カバー&ヴィジュアルを手がけていただいたのは、JHAグランプリなど受賞暦多数の『Rougy』オーナー、上原 健一氏です。映画や音楽などから閃きを得て創作された、シネマティックな世界観を感じてください。

上原氏がイメージする「Cinematic」とは
テーマからどのようにイメージをされましたか

作品を創る時は、映画からインスピレーションを得たり、季節感や街の風景、そこにはどんな音楽が流れているのか、温度感を考えながら、辻褄を合わせていきます。今回は、秋の風がふわっと吹いて髪の毛が動いているような感じの作品にしたいと考えていたのですが、撮影前夜にたまたま映画『バッファロー’66』を流し見していて、白く飛んだような光の感じが頭に残ってしまって。当日の朝、思いつきでカメラマンに「ソラリゼーションをやってみたい」と無茶振りをしました(笑)。

あとは、冬に向かう季節なので、映画『スリーピーホロウ』のような霧がかった少しダークな雰囲気とか、後ろから風を当てて「寒さ」を表現。最終的に、ストーリーを感じるようなシネマティックでドラマティックな作品になればいいなと思っていたので、いい感じになったのではないでしょうか。


表紙の作品


中面の作品(右)


中面の作品(左)

女性像・スタイリング・メイクのポイント
——女性像やメイクやスタイリングのポイント、モデル選びについても教えてください。

往年の映画女優のような雰囲気もするし、現代のモードも感じると、皆さんに言っていただけたのですが、一人の女性の様々な表情が引き出せて良かったです。僕は、昔の映画から現代の映画まで見てきているから、女性像の引き出しは多いと思います。

メイクは、モノクロに映えるように赤リップを使ったのですが、若い時から赤リップを使うのが好きなんですよね。ヘアは動かすことを前提にしていたので、強めのカールをつけたり、ウィッグで髪の長さを足したりもしました。

僕は日本人が好きなので、あまり外国人モデルを使うことは少ないですね。
最近はスタッフが決めてくれるのですが、僕の作品をずっと見てきてたから好きな感じが似ているんですよ。

自分で撮影をしていたから、カメラマンとも共有ができる
——撮影を拝見していて、テストシューティングに時間をかけられていたのが印象的でした。

結局、絵になるので、写真のトーンが決まっていないとなかなか撮影できないのです。そこさえ決まれば、パッと一発撮りみたいな感じの流れが多いです。

僕は今回のように思いついたら、その場でやってみたくなるから、いつもお願いしているカメラマンの梅(梅津 正太氏)とか、松山(松山 優介氏)は、俺らがいつも無茶振りしてきたから、さらに上手くなっていったんだと思います(笑)。

——ご自身で撮影をされる時もあるのですか?

30歳ぐらいまでは、自分で撮っていましたね。今はその経験があるから、カメラマンに「こう撮ってほしい」と指示ができるのです。この位置からこういう角度で光を当てれば、どうなるのかが分かっているから。

本当は自分で撮るのが一番いいと思います。なかなか自分の意志が伝わるカメラマンとも出会えないですから。でも、彼らは何度も俺らの撮影を見てきているので、「こういうのが上原は好き」というのがデータに入っているはず。だから、いつもスムーズに撮影ができています。

スタイリストになる前から撮影は始めていた
—クリエイションを始められたのはいつですか? 

クリエイティブをやりたくて前サロンに入ったので、撮影はスタイリストになる前、23、24歳ぐらいの時から始めていましたね。

昔のカメラはデジタルではなかったので、現像にはお金がかかりましたし、今のように簡単にレタッチもできない。費用は自分の給料から工面してやっていたので、一枚、一枚が貴重。だから、気になるところは見過ごさない。そうやって作ってきたから上手くなったのだと思います。



——手応えを感じられるようになったのはいつですか?

20代後半から30代前半まで、僕は一般誌を月20本ぐらいやっていたのです。『non-no』とか『MORE』とか。それまで業界誌はほとんどやったことがなくて、本格的にやり始めたのは30過ぎぐらいからなのです。

自信がついたのは30歳過ぎぐらいじゃないかな。ある程度できるなと思えるようになったのは。一般誌をやっている時に負けないように努力していたから。

——一般誌と業界誌の違いは感じましたか?

違いはなかったですね。一般誌でもずっとモード系の担当で、ガーリーだったとしても、前髪はパツンとしたようなヘアを作っていたから、業界誌になってもあまりガラッと変えることはなかったです。クリエイティブと言っても、僕は汚い感じは好きじゃないんですよ。一般の人が見てもオシャレが伝わる範囲が好きですね。

クリエイションをやらないと新しい発見ができない
——クリエイティブワークをすることのメリットはなんだと思いますか?

クリエイティブって、僕にとって「新しいものを発見する場」なんです。
いつものサロンワークの中で足らないもの、気づいたものを出す。

やっぱり、発信をしていたいというのもあるし、あまり止まっていたくないんですよね。
マンネリほど怖いものってないし、なんか寂しくなってくるじゃないですか、自分に。だから毎回撮影では、新しい挑戦を入れるように心がけています。

集まるスタッフや客層ともリンクしている
——リクルートでもクリエイティブをしたい方が多いですか?

クリエイティブをやりたいと入ってくる人の割合は、他のサロンより確実に多いと思います。業界誌の表紙撮影で、年12回のうちの2回を俺とRougyのスタッフでやる年もあるから、そういうサロンはまずないからね。

——お客様もクリエイション活動をご存知なのですか?

お客様はそういう活動はあまり知らないと思いますね。でも、俺はもともとモードが好きで。モードって何かと言うと、媚びてないオシャレだと思っていて。街を歩けるレベルだけど、もうちょっとエッジを強くしたような感じが好き。うちのお客様もそういうモードが好きな人が来てくれているから、リンクしているのだと思います。

若い美容師さんへのメッセージ
——最後に、若い美容師さんへメッセージをお願いします!

今例えば韓国とか流行っているけど、日本からの発信が減っている気がするから、そのためにも僕は、皆さんにクリエイティブをやってほしいと思うな。

美容室ってブランドだけど、僕ら美容師もブランドなのです。手に職を持つ技術者の美味しいところは、自分でやったものが自分のブランドにできること。だから、皆さんもクリエイトして、自分のブランドを確立してもらいたいです。。

COVER LOOK BY
Rougy _ Kenichi Uehara

HAIR: Kenichi Uehara (Rougy)
Stylist: Saki Oishi (Rougy)
Assistant: Koudai Kuribara、Kaito Munakata
PHOTO: Shota Umetsu
MODEL: Mukai Miwa

 

 

上原 健一氏
2011年12月、南青山に『Rougy』をオープン。サロンワークを中心に一般誌や業界紙でも独自の世界観を展開し活躍中。2006年、JHAグランプリ受賞、2014、JHAライジングスター最優秀賞受賞、2021年、JHAサロンチーム賞受賞。
http://www.rougy.jp

 

 

 

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