東京ヘアドレッシングアワーズ2022 ハイクリエイション部門 グランプリ 中村 光太氏インタビュー

過去に見たことがない、新しいものを
作ろうと思った時、道が開けた

東京ヘアドレッシングアワーズ 2022 ハイクリエイション部門 グランプリ
中村 光太氏 インタビュー

ungird クリエイティブディレクター
中村 光太氏
1987年6月1日生まれ。岩手県北上市出身。北日本ヘアスタイリストカレッジ卒業。「Unamiw.」オープニングスタッフとして参加し、店長兼ディレクターを経た後、2020年に「Unamiw.」の姉妹店となる「ungird」のクリエイティブディレクターに。サロンワーク以外にクリエイション活動も積極的に参加。今後のクリエイション活動に期待が高まる。

——ハイクリエイション部門グランプリ受賞おめでとうございます！ この作品はTHAや審査員を意識して作られましたか？

THAに出すつもりで作った作品です。過去の受賞作品を見ていると審査員が選ぶ傾向みたいなものが分かってくるので、クリエイションを始めた頃は意識した作品を作っていたのですが、「これではコピー作品だな」とスッキリしない感じがしていました。毎年、エントリーをしてもノミネートまで届かず。このままではいけないと昨年、弊社の社長に「今年は絶対、入ります！」と宣言をして、クリエイションに力を入れて取り組みました。そこで、「過去に見たことがない、新しいものを作ってみよう」と思った時に、今回のイメージが頭の中に出てきたのです。何年か後にこういう人が街を歩いていることはないと思いますが（笑）、SFというか非現実的な世界観です。

——こだわったポイントを教えてください。

クリエイションでやる人が少ないのが横構図とロングヘア。「風」で動きをつけた作品も昔から好きだったのでこだわりました。横作品でロングの髪を動かしながら、端から端まで目一杯使って躍動感を出したかったので、顔まわりにレースを入れたのがポイントです。風を使った撮影はすごく難しく、何枚も撮ってもらった中のベスト。こまさに奇跡の一枚です。それだけに価値のある作品になったかなと思います。

——授賞式では「信じられない」といった様子でしたが、どんなお気持ちだったのですか？

自分の中での目標が、まずはノミネートでした。まさか、こんなに素晴らしい賞をいただけるとは思っていなかったので放心状態になってしまいました（笑）。『Arrows』の山﨑 真氏を中心とする岩手の撮影仲間が数人、授賞式会場にいたので、祝福していただきました。弊社代表の佐々木は岩手で速報を知って泣いていたそうです。また、SNS等で受賞を知ったお客様からは、日本一になった僕を「誇りに思います」と言っていただいたので、「一生、素敵にさせていただきます！」と感謝の気持ちを伝えました。


——クリエイションは始められたのはいつですか？

3、4年ぐらい前です。クリエイションに興味はあったのですが、なかなか行動に移せずにいたところ、代表の佐々木から「やってみないか」と声をかけられたのがきかっけでした。まだ社内にクリエイションをやっている人がいなかったのですが、クリエイション活動を行うことで求人に繋げたいという考えがあったようです。その時、既に山﨑氏が撮影チームを作っていたので参加させてもらうことになりました。現在、チーム自体は、毎月1、2回ほど撮影を行なっています。グループラインには20名ぐらいが登録しており、その中で常時来る人は10人ぐらいです。各サロンのスタッフも来ているので、若い世代も結構います。今回の作品も撮影会で作り、山﨑氏が撮影しました。

——作品づくりにおいてインスピレーションの源になっているものはありますか？

音楽とファッションが好きなのですが、ジャンルは割と幅広く、一般的に流行っているものを取り入れることも多いです。でも、クリエイションを始めてからちょっと見る目線が変わったかもしれないですね。興味がないジャンルの音楽も聞いてみるようになったり、外を歩いていると「クリエイションで使えるな」と、建物や家具の色みや質感を見るようになったり。アンテナが勝手に立つようになりましたね。

——クリエイション活動を始めてからメリットと感じることは？

よく、クリエイションをやると、ものすごく売上が上がるなどの成果があると聞くのですが、自分の感覚としては、想像力が広がったのが一番です。サロンワークで言えば、似合わせの部分でレベルアップしたと自負しています。ハイクリエイションは非現実的なヘアを作るのですが、写真を通してディティールを作る中で、サロンワークでも「こうしたら可愛い」とか「面白い」と落とし込めるニュアンスを発見することが出来るのです。似合わせで、お客様の満足度が上がったことは大きかったですね。あとは、やはりクリエイション活動をしていると、美容師って感じがします（笑）。人それぞれだとは思うのですが、自分の中で求めていた美容師像があって、そこに辿り着いた感じがあります。

——クリエイションを続ける原動力は何ですか？

クリエイションは好きなのですが、今まで正直、結構しんどかったです。答えがないし、毎回いい作品が撮れる訳でもないので、すごく悩んでいて、撮影チームの先輩にも相談をしていました。今回、リアルクリエイション部門でグランプリを受賞された『niko hair』の大野 紘一氏にも撮影に来ていただいたのですが、懇親会でアドバイスをいただきました。でも、今回、素敵な賞をいただき、自信がついたのもあって、楽しくなりました。注目される立場になったので、8割プレッシャーが乗ってきましたけど（笑）。

——今後の目標を教えてください！

今回の受賞で撮影チームに恩返しが出来たと思います。前回のTHAでは山﨑氏がグランプリを獲りましたし、全国の美容師さんに「岩手はスゴい」「東北が熱い！」と思っていただけていたら嬉しいですね。今年も我流でチャレンジをして、ノミネートを狙います。撮影チームからもたくさん良い結果を出して、次に繋げていけたらと思います。東京に行きたいと考えている美容学生が僕たちの活動を見て、「岩手でこんなに活躍している美容師がいるなら、地元に残ってもいいか」と思ってくれたり、クリエイションをやりたいとサロンに入ってくる人が増えていったら嬉しい。サロン内でも撮影チームを作るのが目標です。

ungird
岩手県北上市九年橋３丁目18-2 
https://www.unamiw.com/ungird/