「自分の好き」を貫いて挑んだ作品。
若手を育て、美容師の価値を上げていきたい!
東京へアドレッシングアワーズ 2022 インスタイル部門 グランプリ
鈴木 武彦氏 インタビュー
Bellclip オーナー
鈴木 武彦氏
福島県高等理容美容学院卒。新潟市内で勤務後、2009年、先代母より『Bellclip』を継ぐ。2021年、ミルボンDA photo works 2021/ファイナリスト選出 審査員大林 審査員小林 デザイナー賞ダブル受賞、JHA 2021/salon team部門ノミネート、THA 2021/リアルクリエイション部門最終ノミネート。2022年、ミルボンDA AD photo 2022/ファイナリスト選出 優秀賞受賞、JHA 2022/rising star部門ノミネート、JHA 2022/salon team部門ノミネート、THA 2022/リアルクリエイション部門最終ノミネートなど。
@bell.suzu.take
——インスタイル部門(フォト)のグランプリ受賞おめでとうございます! コンセプトとどのような撮影だったのか教えてください!
コンセプトは、「自分の好きなものを貫く」。その時の気分や好きなものをナチュラルなテイストで表現しました。僕は花や植物が好きなので、今回はドライフラワーをアクセントにチョイス。あとは衣装の色合い、ロングヘアに自分らしさを出したカール感、気に入っているデザインの椅子と、好きなものを全て詰め込んでいます。
インスタイル部門は初年度からずっと見ており、エントリーもしていましたが、なかなかノミネートには入れませんでした。でも、このオシャレな部門に「絶対、地元・福島からノミネートされたい!」。その一心で、自分と向き合いながら準備を進めて作った作品です。撮影をしたのは7月下旬。お店の駐車場で灼熱の中、蚊に刺されながらの撮影でした(笑)。朝から仕込みを開始してトータルで3時間。モデルさんも暑かったと思うのですが、柔らかい自然光の中で、それを感じさせない涼しげな表情を見せてくれました。
——作品から細部へのこだわりも感じました。
昔から“繊細な毛束感”を意識していて、それが自分の強みだと思っています。授賞式の時、審査員の前原さんから「靴下が入っていたのが良かった」と言っていただいたのですが、あれは狙ったわけではなく、偶然の産物なんです。黒いブーツも用意していたのですが、モデルさんが履いていた靴下がたまたま写ってしまい、後でトリミングをすればいいかと思っていたのですが、作品として見た時に、ほわっとし過ぎているところに締め色になっているなと思ったので、そのままにしたのです。功を奏しましたね。
——インスタイル部門(フォト)ということで意識したことはありますか?
インスタイル部門は、「日常の一部を切り取ったような、リアルなヘアスタイルとライフスタイルの共存」がテーマ。今回のモデルさんは、地元で会社員をしている普通の女の子なので、そういう子をどのぐらいオシャレに可愛く撮れるかというところはすごく意識したところです。
無理をしない世界観と言いますか。ヘアカラーもサロンスタイルの色みで、そこにカールを組み合わせ、衣装や小物をベストなバランスで構成しました。あとは画角も意識しましたね。クリエイティブ寄りの作品を作る時はバストアップが多いのですが、インスタイルは引きが良いと思ったので、バランスを考えながら構図を決めました。
——審査員は意識しましたか?
審査員は全員、有名な方なので、僕もセミナーに行ったことがありますし、どういうスタイルを作られているかも存じています。でも、そこを狙って作るという意識はなかったですね。
勝手になのですが、この作品は女性審査員の方が気に入ってくださるのではないかと思っていました。だから授賞式で女性審査員のデザイナーズ賞に選ばれなかった時、「終わった…」と落胆。でも、最後にグランプリで名前を呼ばれたので、嬉しくて泣いてしまいました。
——クリエイションを始めたのはいつからですか?
5、6年ぐらい前です。その時、30代半ばに差し掛かっていたので、美容師年齢的には遅めだと思います。母の代からお店を継いで12、13年目になるのですが、継いだ時からサロンスタイルの撮影はやっていました。でも、地域にクリエイション撮影をやっている人は全くいない環境だったのです。業界誌に載っているJHAの受賞作品を見て「同じ美容師がこんなに素敵な作品を作っているんだ」と思いながら、どうやって撮っているのか想像が出来なくて悔しい気持ちもありました。しかし、自分のお店のことで手一杯だったということもあって、なかなかアクションを起こせないでいたのです。きっかけは美容師の兄と共同経営をしていた『Lucile』の清野 晃さんに「クリエイションをやりたいんだけど、興味ある?」と声をかけていただいたこと。「やりたいです!」と即答したのが始まりでした。
——現在、福島でクリエイションの撮影仲間はいらっしゃいますか?
『Lucile』の清野さんが中心となり、共に撮影会などの取り組みをして撮影仲間を増やしていきました。今回、リアルクリエイション部門フォトでデザイナーズ賞を受賞した『GURI』の遠藤 大さんをはじめ、撮影を通じて出会った仲間がいるので、いつも切磋琢磨させてもらっています。なので、今は僕一人という感覚はないですね。世代的には、30代前半〜40代です。今、福島チームでは「若手を育てたい」と思いながら活動をしています。嬉しいことに美容学生が僕の最近の結果などを見てくれ、「クリエイションをやってみたい」と4月に入社予定の子もいます。
——創作のインスピレーションはどこから湧いてくるのですか?
僕はテレビや映画はあまり見ないので、やはり、いつも花とか植物を見ています。枝ぶりなどにデザイン性を感じるのです。あとは、寝る前に目をつぶってイメトレをしています。すぐ寝てしまいますけど(笑)。ファッションのブランドが打ち出しているシーズンヴィジュアルは好きなので見ることはありますし、フォトグラファーさんの作品もたまに見ます。
もちろん、クリエイションを始めた最初の頃は、Pinterestの画像や他の美容師さんの作品、過去のコンテスト受賞作品もよく見ていました。ガモウさんのセミナーに毎週のように行っていた時期もあります。バンドで言えばコピーバンド。周りでやっている方がいなかったので、まずは何かを見本として真似をしないと上手くならないと思ったのです。あとはカットコンテストなどを見に行ったり、出場したりした時に、勝手に一人審査員をしてみたり。「これ、絶対可愛い」と思った作品がグランプリになったりすると、答え合わせの感じで目が養われていきました。でも、人の作品の良いところはしっかりインプットしたし、見てばっかりいても自分のデザインが出てこないと感じたので、今はあまり見過ぎないようにしています。
——作品撮りはお金と時間を要しますが、やめずに続けてこられた理由をお聞かせください。
それ以上のものが得られているというのが一番の理由ですね。いいお金、いい時間の使い方が出来ていると思うから続けられるのです。「クリエイションはめちゃくちゃ楽しい」と言う方もいますが、正直、僕は「楽しいけど、苦しい」。苦しいけどそれ以上にプラスになることがあるのです。
具体的に言えば、ここ数年でサロンスタイルの技術力、発想力、似合わせ、バランス感覚、センスは10年前の自分より格段にアップしたと感じますし、周りの人にも「上手くなったな」と言われるぐらいです。また、サロンスタイルの撮り方も上手くなった気がします。お店のSNSなどにアップしているのですが、「サロンスタイルが素敵だったから来ました」という新規客も結構いらっしゃるので、培ってきたものが成果として出ているなと感じます。また、撮影でスタッフにメイクをお願いすることもあるので、教育にも繋がっているのではないでしょうか。
——最後に今後の目標を教えてください!
フォトコンで言えば、今年もTHAにトライしたい気持ちがあるので、チャレンジをさせてください!まだハイクリエイション部門にノミネートされたことがないというのもありますし、毎年、結果が出せるよう、連覇とまでは言わないですが、ノミネートに入り続けていきたいと思っています。他のコンテストで言えば、JHAでは昨年と一昨年、ノミネートに入ったので、今年こそ受賞を狙いたいですね。
今回、THAでグランプリをいただきましたが、「福島」の名前がコンテストで呼ばれたことにより、福島の美容を少し底上げすることができたのかなと思っています。お客様からも「すごいね!」「グランプリを獲るような人に切ってもらえる」ととても喜んでいただき、街の人たちからも祝福を受けました。そこで今年の目標として考えているのは、“美容師の価値”を上げることです。
一つは、お客様から見た美容師の価値。必然的に売上も上げることができ、お店の収益やスタッフの待遇を良くすることでモチベーションにも繋がります。そして、もう一つは、美容業界全体で美容師の価値を上げること。僕個人、そして福島チームの活躍が起爆剤となり、全国の美容師の熱量を高めて、若者が美容師を目指したいと思えるような業界にしていきたい。色々な意味で、美容師の価値を上げることでより豊かな未来にしていくというのが、今後の大きなヴィジョンです。
Bellclip
福島市方木田字永屋21‐5
https://bellclip.amebaownd.com
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