GAMO NEWS今号のテーマは『Liberty』。
カバー&ヴィジュアルを手がけていただいたのは、 美容業界、ファッション業界から常に注目を集めている 『siika NIKAI』代表のサトー マリさん。
数多くの雑誌撮影を経験してきた彼女がいま解き放つ、自由とは。
サトーさんがイメージする
テーマ『Liberty』とは
—テーマから、どのようにイメージを展開されましたか?女性像についてもお聞かせください。
業界誌は髪のクオリティが一番なので、束感が見えるようにするなど決まりもありますが、今回の撮影では制限がなかったので、テーマである自由や解放という中で、本当に自分が「写真としていい」と思うものを創ろうと思いました。
女性像ですが、甘いthe女の子という作品よりも、カッコいいとか芯が通っている感じを意識して創ることが多いです。今回もそこはブラさず、あとはどれだけ「今までの自分っぽいイメージを覆せるか」がテーマでもありました。
表紙の作品
中面の作品(右)
中面の作品(左)
ースタイルのポイントを詳しく教えてください。
今までカラーを活かした作品が多かったので、今回は黒髪でどれだけ新しい世界観が創れるかというところにフィーチャーしてみました。
中面(左)のスタイルで、柔らかなウェーブヘアを作り、そこを伏線とし、表紙はカチッとラインを出したカットで勝負し、違和感を持たせました。重さを残すとメンズライクな感じになるのですが、扇のようにカットして頭の丸みを誇張しました。この黒髪のモデルさんでは、似合わせ次第で自由に変われることを表現しています。
中面(右)のスタイルは、モデルさんの根元が黒かったので、あえてムラっぽくしてしまおうと思い、毛先に黒っぽく影が落ちて見えるようにローライトを入れています。そこに少し違和感を持たせるため、黒い網を被せてみたらいい感じに、さらにムラっぽくなりました。中面(左)スタイルの網では、その中で「自由になりたい」ともがいている感じを表しています。
カメラマンの世界観に合わせて
モデルを選ぶようにしている
ー撮影の時に心がけていることはありますか?
撮影をしてみると、最初に考えていたイメージとはズレが生じていくものなので、その場で臨機応変に対応できるよう、小物や衣装を揃えるなど準備はしっかりします。でも、ヘアの練習はしません。今まで何回か練習してから臨んだことがあるのですが上手くいった試しがないです(笑)。ヘアはぶっつけ本番で、あとはモデルさんとカメラマンさんと私の相性だと思っています。相性が悪いと全部崩れてしまう時もありますね。
私が撮影を始めたのは、スタイリストになった当日からでしたが、最初の頃は「私のイメージと全然違う」と思うことばかりで、それを全部カメラマンさんのせいにしていましたね(笑)。でも、撮影の経験を重ねていくうちに、自分のイメージと全く同じものができないのが写真の良さなのかもしれないと思い、そこからカメラマンさんがどういう世界観を持たれている人なのかを見るようになりました。今は、私がやりたいテーマやどういう雰囲気の写真にしたいかでカメラマンさんを選び、その人に合わせてモデルを選ぶようにしています。今回、お願いした松山さんは、女性の強さを引き出してくれるイメージがあり、もう10年来の付き合いになりますが、私がJHAで初めてノミネートされた作品も彼が撮ったものでした。
コンテストに全敗して気づき
カットをもう一度勉強し直した
ー撮影をするようになって得たものは?
え〜、なんだろう?美容師のフォロワー数ですかね(笑)。
これは少しネガティブな話になってしまうのですが、雑誌がメインの時代、1ヶ月に10誌の撮影をやることもあり、「他の美容師よりもできる」と少し自意識過剰になっていた時期がありました。独立をして、勤めていたお店のブランドが外れても大丈夫と思っていたのですが、コンテストに応募したところ全敗しました。その時、「あれ? 私って意外とダメだな」と思い、技術が疎かになっていたことに気づいたのです。また同時に色々な人に私の作品はどういうイメージかを聞きまくったところ、今まで言ってくれなかったネガティブな意見も聞けて「自分はそう思われていたのか」「私の作品は時代遅れだったんだ」という気づきもありました。そこから、がむしゃらにカットを勉強し直しました。その気づきがあったからこそ今があるので、それが「得たもの」なのではないかと思っています。
『SNIP STYLE』掲載作品 PHOTO:松山 優介氏
ー撮影に興味のある若い美容師さんにメッセージをお願いします。
撮影がやりたいか、やりたくないかではなく、1回やってみる! 1回やったら次の扉が待っていて、終わったらまた次の扉が出てくるので、そこで嫌になったらやめればいいだけなので、1回やって欲しいです。
クリエイションのスタイルとサロンスタイルは全く違います。サロンスタイルが上手い人がクリエイションをやってみたら、素人のように下手なイメージがあって、それって私はカッコ悪いなと思ってしまいます。だったら、どっちもできた方がカッコいいし、視野も広がるのではないかと思います。
当サロンでは、スタイリストになったら撮影をやってもらいます。その理由は、例えば将来、独立を考えている美容師であれば、自分の作品イメージを写真という形にできた方が有利だからです。
SNSが普及し、サロンのビジュアルイメージが作れないとお客さんが集客できない時代なので、カットやカラーを勉強するのと同じぐらい撮影は大事かな。でも、やり方を覚えて実際にできるかと言ったら、すぐにできるものではないので、インプットとアウトプットを本人たちが噛み砕いていきながら成長してくれたらと思っています。
COVER LOOK BY
siika NIKAI_Mari Sato
HAIR& MAKE-UP: Mari Sato(siika NIKAI)
ASSISTANT:Haruka Date(sika NIKAI) /Oshima Kouki (sika NIKAI)
PHOTO:Yusuke Matsuyama
MODEL:Misa Omori/Koyoi Momooka
サトー マリ氏
茨城県出身。サロンワークを中心に、ファッション誌、一般誌、業界誌の撮影でも活躍し、クリエイティブ創作を突き進めている。近年では、審査員、メーカーとのコラボ、客員なども務める。二児の母親でもある。目に留まるヘアスタイルを得意とし、ジェンダーレスなスタイルにも定評がある。2016年に加藤 健矢氏と共に『siika』を立ち上げる。2019年に自身がプロデュースする『siika NIKAI』を設立。
東京都目黒区上目黒1-8-28 ミラフィールⅡ 1F
https://siika.tokyo/
@nikai_siika
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