GAMO NEWS今月号のテーマは『Structure』。
カバー&ヴィジュアルを手がけていただいたのは、これまでの美容室の固定概念を脱した独自の世界観で『EILANT』を打ち出す、天野 成弥氏。カットとスタイリングで魅せる構築的なヘアデザインの裏側に迫ります。
天野さんがイメージする
テーマ『Structure』とは
—テーマを聞いたときの第一印象を教えてください。
自分にぴったりなテーマだと思いました。日頃から形やカットのプロセスにこだわっているので、すっと心に落ちて、作品づくりに向き合うことができました。
実はあまり形式ばった作品撮りは行っていなくて、気分で自分が作りたいものを作って趣味のような形で撮影をしているんです。幼い頃からものづくりが好きだった延長線上にあるように思います。そのときの気分でモデルさんをカットして、スタイリングして、撮影をして。そうやって新しいものが生まれるので、「作品撮りをしよう」と意気込むことはほとんどありません。だから今回のような改めて作品撮りに向き合う機会はすごく有意義でしたね。
—それぞれの作品について、デザインのポイントをお聞かせください。
3点ともにフォルムや形、質感がこだわりです。表紙と中面左の作品は同一のモデルさんで、僕に「何をしてもいいよ」と全面的に任せてくれたので、中面左のヘアを作ってから、さらにカットして表紙のデザインに至りました。
まず中面左のヘアは美しく仕上げたボブをあえて壊すようにしてスタイルを作っていきました。普段のサロンワークではやらないようなカットラインやセクションの取り方をして、違和感のあるスタイルに。実は「日常のカットプロセスとは異なることをして、新しいものを作ること」を裏テーマに設定していました。
次に中面左のヘアを切り込んで作った表紙は、まさに今回のテーマ『Structure』を体現するようなデザイン。建築的で、一見すると髪の毛には見えないような作品にできたらと、スケッチを繰り返して最終的なバランスを探りました。
最後に中面右のヘアはモデルさんの頭の骨格が美しかったので壊さずに生かしつつ、けれども違和感が欲しかったのでバランスを試行錯誤。モデルさんにフィットさせながら、頭の形が変わって見えるような違和感のあるデザインに着地しました。カットをメインに、スタイリングで美しく仕上げるという僕の好きな作り方で落とし込むことができました。前髪のバランスにもぜひ注目して欲しいです。
—モデル選びにこだわりはありますか。
今回はテーマがありながらも表現の自由度がかなり高かったので、外国の方でかつカットできることを条件にスタッフに探してもらいました。作品を作る上でカットできることは必須条件です。思い切りカットさせてくれるモデルさんと巡り会えたことも、今回の表紙のヘアデザインを作ることができた大きな要因です。
—今回は撮影もご自身で行いました。カメラを始めたきっかけは?
アシスタントのころなので、年齢でいうと22歳ごろだと思います。働いていたサロンでたまたま撮影をする機会をいただいたのをきっかけに、「自分でも撮影してみたい」と思い、カメラを手に取りました。
今ではSNSが当たり前になり、ご自身でスタイル撮影をする美容師さんも多いと思いますが、比較的早い段階から興味を持って撮影を始めていましたね。独学で遊ぶようにカメラに触れて、撮ってみて、現像してみての繰り返しです。
ヘアデザインを撮るだけでなく、旅行が趣味なので行く先々で景色を撮影しています。写真を撮るために出かけることもありますよ。最近はフィルムで撮影することの良さを改めて感じていて、今回の撮影のインスピレーションにもなりました。
—作品を作るときに何かを参考にしたり、インスピレーションを受けることはありますか。
今はSNSなどに情報が溢れていますが、あえて情報を制限し、影響を受けないように努力しています。どこかで見たことのある作品にならないように、極限までウィッグでカットしたり、スタイリングしてみたりして、自ら新しいバランスを見つけるのが理想です。この時代にものづくりをするからこそ、自分で制限することも必要だと思います。ただ建築を見たり、美術館に足を運ぶことが好きなので、気がつけばインプットしていて、創造するときのプラスに働いていると感じています。
クリエイティビティに富んだ
ヘアデザインの原点は
お客様の要望を叶えたいという思い
—今回の撮影にはサロンスタッフのみなさん全員が撮影に立ち会いました。何か意図することがあったのでしょうか。
僕のサロンコンセプトに共感した人がスタッフとして集まっているのでそれぞれの好きを共有できているということが前提にあります。そして日頃からサロンワークの中でデザインを見せることでスタッフを教育していますが、なかなかそれ以上のものを見せられる機会はありません。
僕が日頃伝えていることを体で感じて欲しい。自分の手仕事を目の前で見せてあげたいという想いで、ただ現場に来て欲しいとみんなに伝えたんです。何かしらを受け取ってくれたら嬉しいですね。裏話ですが、撮影中にかけていた音楽はスタッフが選曲して、今日のために作ってくれたプレイリストなんです。僕が集中できるように、気持ちがのるようにと考えて、用意してくれました。音も空間作りに欠かせない大切なピースの一つ。ありきたりなものではなく、五感が研ぎ澄まされるような、みんながいいものを作れるような音に包まれながらものづくりの時間を共有できたと思います。
—天野さんをはじめ、『EILANT』のみなさんが作るスタイルはサロンワークといえどクリエイティビティに富んでいます。サロンワークでデザインするときに大切にしていることは?
適正タイムの中で、お客様の満足度を満たすことを大切にしています。そして技術。上手いに越したことはありませんし、当店に来ていただいているお客様はファッショナブルでアーティスティックな方ばかり。そんなお客様の要望に応えるべく、コンテストのような、ヘアショーのようなサロンワークを日々過ごしています。また、お客様の想像を越えなければ満足していただけませんので、毎日毎日、自分の作るデザインをアップデートしていると言っても過言ではありません。まさにお客様に育てていただいていると思っていますし、とっても濃密なサロンワークの時間が流れています。
—サロンワークとクリエイションで通ずるところはありますか。
例えばデザインを数値で表すとしたら0から100がサロンワークで、100以上がクリエイション。けれどもときにサロンワークでも、お客様によっては100以上を求められることもあります。そうしたときに100までしか知らなければ、そのお客様の要望を叶えることができません。常に100以上を表現できるということは、美容師にとって大切な要素で、お客様のためでもあります。
お客様のためにいつもやっていることがマンネリ化しないように、時代に合わせてアウトプットできるようになるためにも、クリエイションは大切だと考えています。
COVER LOOK BY
EILANT_Seiya Amano
HAIR & PHOTO: Seiya Amano(EILANT)
MAKE-UP:KURUMI(EILANT)
天野 成弥氏
2011年渡英、帰国後都内サロンを経て2020年4月に代官山でEILANTをスタート。唯一無二のデザイン力で国内外で活躍。
東京都渋谷区恵比寿西2-14-10 TWONE代官山3F
https://www.eilant.jp/
@eilantofficial
@eilantcustomer
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