GAMO NEWS No.115のカバー&ヴィジュアルを手がけていただいたのは、氏川りの氏。数々のコンテストで名を馳せ、唯一無二のクリエイションはいつも注目を集めています。そんな氏川氏が「Couture」をテーマに「三都杯」でグランプリに輝いた作品をセルフオマージュ。アイディアが沸き続け、精力的な活動を続ける原動力とは。
好きな人に届けばいい
自分の歴史を詰め込んだ『Couture」
—“オーダーメイドの一点ものを仕立てる”という意味を持つテーマ『クチュール』から、どのようなインスピレーションを受けましたか。
ガモウ関西が開催しているコンテスト「三都杯」で今年グランプリを獲らせていただきました。そのときの作品を今の自分の感性で改めて作ってみたらどうだろうか、と思ったのが始まりです。このガモウニュースをみなさんが見る頃はちょうど「三都杯」のことを考え始める美容師さんも多い時期だと思うので、刺激できたらなと。そして、「三都杯」はとても素敵なコンテストなので、参加する人がもっと増えたらいいなと思っています。
—ヘアはもちろん衣装がとても印象的でした。まずはファッションのこだわりを教えてください。
私自身洋服が好きで奇抜なデザインを日頃から着たり、とにかくたくさんの洋服を持っているので作品撮りでは衣装として使うことも多いんです。けれども、ヘアとメイクに集中したいここぞ、というときは信頼しているプロにお願いします。
—それぞれの衣装についても教えてください。
「三都杯」では「愛のバトン」をテーマに、一人の女の子の成長を見守る美容師の視点で作品を作りました。なので、衣装は赤ちゃん(中面左ページ)、学生(表紙)、ウエディング(中面右ページ)をモチーフにしています。お客様の人生の節目に立ち会える唯一無二の仕事である美容師の素晴らしさを詰め込みました。
今回の撮影では、さらに私物をミックスしてスタイリングしました。加えて裏テーマをセーラームーンに。セーラームーンは私が生きてきた時代に流行り、今でも影響を与える偉大な作品です。衣装を作ってくださったhanaさんの世界観に、自分が生きてきた時代感をミックスしたイメージです。
—ヘアデザインも全く異なるデザインになりましたね。リアルとフォトで違いを意識したところは?
まず自毛ではできない、ウィッグだからこそできるスタイルをやりたかったんです。例えば中面右ページのような鈑が刺さっているデザインは絶対に自毛では作れないですよね。また「三都杯」のようなリアルコンテストのデザインは、「好きと感じてくれる人が多いといいな」と思いますが、今回は「好きな人は好きでいてくれ(笑)」という思いで作りました。
—“らしさ”を解放できるテーマだったんですね。モデル選びのこだわりはありますか。
私は、自分の好きなタイプのモデルさんにお願いしています。それは単純に顔が好きということではなく、そのモデルさんからインスピレーションが湧くかが大切で、会ったときにやりたいことが湧いてくるんです。だから何度もお願いしているモデルさんも多いです。
最近はほかの美容師さんとの作品撮りでカメラやメイクを担当させていただいたり、セミナーをやらせてもらったり、いろいろな活動をしているので、モデルさんとの出会いが多く、状況に恵まれていますね。
人生で初めて打ち込めたのが
クリエイションだった
—氏川さんがクリエイションに目覚めたきっかけを教えてください。
「nikohair」で働き始めて、サロンスタイルには力を入れていました。女性誌に掲載していただくこともあって、高知では頑張っていると思っていましたし、そういう自分に満足していたのかもしれません。それがあるとき、有名な美容師さんにお会いして、「ブック持っていないの?」と聞かれました。当時はブックが何かも分からなくて、クリエイションや作品撮りについても未知数。美容師さんに響かせるとはどういうことなのか、全く話についていけませんでした。これがきっかけで次の日には、オーナーと二人でモデルさんを呼んで撮影をスタートしました。12年ぐらい前だったと思います。
始めてから2年ぐらい経ったときには毎日1〜2作品を撮影するようになり、自ずから撮影しないと、作品を作るペースに追いつかなくなってカメラも始めました。どう撮れば素敵に見えるのか、またヘアやメイクがどう映るのかが分かるようになったので、よりイメージが掴みやすくなりました。
—それほど夢中になったんですね。美容学生の頃にもコンテストに出場したことはあまりなかったのでしょうか。
取り組んだことはありましたが、一生懸命挑戦するというよりも、純粋に楽しいから出場するという感覚でした。あの頃、”成長する楽しさ”に気づけていたらよかったのかもしれませんが、今だからこそ気づけたとも思っています。
—今ではリアル・フォトを問わず、本当にたくさんのコンテストに挑戦していますね。作品のヒントはどこから?そして、アイディアは尽きませんか?
私は好きなものがかなりはっきりしているタイプなので、ほかの方の話を間いていると好きがあってよかったと思います。例えばホラーでも血みどろではなく、間抜けなところやポップさのあるホラーが好き。インスピレーションは映画やマンガ、音楽、さらには世の中のニュースにも潜んでいます。誰かの真似では二番煎じだから、世に出した時にはもう遅いんです。“自分らしさ”とは、自分の中を探ることで新しいものに出逢うことです。
—氏川さんにとってクリエイションとは?
私の輪郭を探すことです。自分を改めて見つめ直し、深掘りすることで、姿形が見えてきて自分を理解することの手伝いになります。自分を知るためのツールとも言えるでしょう。
私は学生時代から大人になるまで、何かに一生懸命に打ち込んだことがなく、実は目標がないことがコンプレックスでした。けれども目の前のことに打ち込んでいれば絶対にいい未来があります。今でも絶対とする目標はないけれど、そのときを一生懸命に生きていたらいいんだと思います。クリエイションに打ち込んだこの何年でそう思えるようになり、人生が大きく変わりました。
少しでもクリエイションに興味があるという人は、素敵な経験や人と巡り会えるのでチャレンジして欲しいですね。結果が出ない時期はとても辛く、ときに負荷がかかることもあると思いますカや、見つけようと思わなくても一緒に頑張ろうと思える人に出逢えますよ。
COVER LOOK BY
niko hair_Rino Ujikawa
HAIR & MAKEUP:Rino Ujikawa(niko hair)
PHOTO:Ikoma Onogawa(KENOMIKA.)
COSTUME:hana
氏川りの氏
1985年、高知県出身。高知理容美容専門学校卒業。高知県内の1店舗を経て、2009年に『LABOON(現niko hair)』に入社。現在、アートディレクターを務める。「JHA」や「KHA」「id」「DA」「三都杯」などコンテストへの挑戦を続け、多数の受賞•入賞を果たす。
〒780 0825高知県高知市農人町5-35
TEL:088-885-0025
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