GAMO NEWSのテーマは、今季のファッションキーワードでもある『Sheer』。
カバー&ヴィジュアルを手がけていただいたのは、コンテストや業界誌でも活躍されている『CARNIVAL』グループのクリエイティブディレクター、kazu氏です。
春の光を感じる作品はどのように撮影されたのか。Webも合わせてご覧ください!
kazu氏がイメージする「Sheer」とは
—テーマ「Sheer」からイメージしたことは何ですか?
Sheerという言葉から「淡い」とか「ゆるやか」な感じをイメージしました。それをどう表現するかを考えた時、カラーをして少し日が経った状態の質感、カットもいつもの自分なら切るような場所も少し残してみたりして、時間の経過=自然の風化を作品の中に入れていくこと。また、カメラマンさんの提案で自然光の逆光と風を使って撮影することで、Sheerな世界観を表現してみようと思いました。
自分自身、今まで目を向けてこなかったテーマですが、ずっと「柔らかい」とか「可愛い」をやってみたいと思っていたのです。ここ数年、クリエイティブの撮影をやらせてもらう機会が多くなってきたのですが、自分らしい作品というと、少し硬かったり、男性的、中性的なイメージだと思います。しかし、まだ“自分らしい”をはっきり提示してはいけない、自分ブランドが出来上がるのはもう少し先だ。これからもっと色々なことに挑戦していきたいと思うきっかけになりました。今回の作品は、一般の女性が見て、純粋に「可愛い」と言ってくれたら嬉しいなと思います。
表紙の作品
中面の作品
撮影日から逆算して仕込みを行いました
—スタイルのポイントを教えてください。
<カット>
ベースはグラデーションボブです。撮影日から逆算して1ヶ月前にカット。撮影2日前に毛量調整を行い、毛が揺れる場所、揺れない場所をチェックしました。
いつも、クリエイティブ作品では研ぎに研いだ状態で、その瞬間に切ったようなカットをしていますが、今回のように、時間の経過を表現するのは初の試みでした。クリエイティブ的な洗練度から言えば、不完全なのかもしれないですが、こういう考え方もテーマとしては面白いのかなと思います。
<カラー>
ブリーチをして、アンダー17レベルまでリフトしてそこから一度、すごく薄いベージュオンカラー。薄いベージュにバイオレットを5%ミックスしたものをトナーして、アンダーを少し補正。カラートリートメントのクリア10にピンクのカラートリートメント1を乗せています。
仕込んでいる途中に、いつもなら染まりが甘いなと感じたら薬剤を強くするところを、今回はグッとこらえました。完璧に芯から発色をしていない薄染まりでも、動いた時に柔らかさや可愛さが出るようなカラーを意識しました。また、洗いざらしのような感じを出したかったので、カラー後は、モデルさんに家でしっかりシャンプーをしてもらうようにお願いしました。
<メイク>
肌がキレイに見えるように、パール系のアイテムを使っています。
自分一人の作品ではない、私たちの作品です
—今回の撮影チームやイメージの伝え方などを教えてください
ロケをやるのは8年ぶりで、クリエイティブ作品では初めての試みでした。
カメラマンの奥村 浩毅さんは、ずっと仕事をお願いしているカメラマンさんです。いつもアート写真やイメージフォトを集めて、今回だと「自然光で、逆光の写真が撮りたい」というような要望をお伝えしています。僕は、やりたいことが最初から100%出てこないタイプなので、撮影の現場でも「あれもいいかも」「これもいいかも」と考えてしまいます。奥村さんはそれを汲んでくださり、終わりを決めずにいつも付き合ってくれますし、ダメなものはダメとハッキリ言ってくださるので、仕事関係の中で一番頼れる存在ですね。
メイクを担当するアシスタントには、イメージフォトや全体の構図を見せて、やって欲しいことをざっくり伝え、後は本人に任せています。
『CARNIVAL』グループにはメイクができるスタッフが4名いるのですが、今回アシスタントをしてくれたchihiroは、高校生の頃から来てくれていたお客様だったのです。大学進学後、「美容師は素晴らしい仕事」「私も美容師になりたい」と大学を辞め、弊社(株式会社T・S・K)に入社しました。今年で3年目になりますが、メイクも覚え、撮影の現場でも活躍してくれるようになりました。
衣装は最近、自分で考えたりすることが多いですね。ベースとなる衣装を1、2点用意して、あとは、今回の撮影で言えば、紐や布など自由に切ったり、貼ったり、巻いたりすることが可能な素材をヘアの動きを見ながら組み合わせていきます。ヘアと衣装の連動感が取れているとフォトの世界観が強まるので、衣装は大切ですね。
モデルさんは当店のお客様です。サロンモデルさんは、色々な美容師さんがカットやカラーをしているので、髪がめちゃくちゃな状態になっている子が多い。仕事をした時に「何回かお店に通ってくれたら、カットを修正していって手入れがしやすい状態に戻してあげるよ」と伝えると、そこからお客様としてメンテナンスで定期的に通ってくれ、カットモデルもやってくれる子が多いです。
でも、撮影のために「前髪を短く切らせて」と言うようなお願いの仕方はしません。基本は普通のお客様と同じようにカウンセリングをして、本人の要望を聞き、嫌だと思っていることはしません。自分のデザイン優先ではなく、モデルさんの似合わせを第一に考えないと、切ってはダメかなと思います。撮影の後、「頑張って創ってくれたスタイルだから」とそのままの髪で帰ってくれるモデルさんが多いのが嬉しいです。モデルさんたちの思いやりも感じますし、中には撮影のために一年間、髪を伸ばしてくれている子もいる。その気持ちに、人として、美容師として応えたいと思っています。
撮影は、カメラマンさん、アシスタント、モデルさん、いろいろな人が一つの目標に向かって、それぞれが想いを込めて協力してくれています。だから最近は、「自分の作品です」とは言えないですね。「私たちの作品です」という想いで世に出していかなくてはと強く思っています。
顧客、地域貢献に繋がらなければクリエイティブをやる意味はない
—クリエイティブは社内でも力を入れて取り組まれているのですか?
多くの美容学生さんからも質問がありますし、クリエイションがやりたくて入社するスタッフも多いです。でも、皆さんが思っているイメージとは少し異なるかもしれません。
弊社は「地域No.1の生涯顧客の創出」を理念に掲げ、現在4店舗を展開しています。都心ではなく、練馬の沿線上に店舗があるので、お客様は子どもから高齢者まで幅広く、地域に根を張り、お客様と長くお付き合いをして共に歳を取っていくことを理想としています。
「顧客のため、地域貢献のために何ができるか」というベクトルですべて考えているので、クリエイションがそこに繋がらないのであれば、やる必要がないという判断になります。入社して最初の数年は、サロンワークだけです。まずは、サロンワークでの白髪染めの大切さだったり、そういうことを理解した上でなければ難しいですね。
僕は2店舗で店長をやらせてもらっていますが、スタッフにクリエイションの話は一切しません。接客や施術についての指導だけです。僕はサロンのお客様がすごく大切だし、大好きなので、脳みその99%はサロンにあり、1%がクリエイションという割合。サロンに来る全てのお客様のキレイさ、可愛さのボトムを底上げしていきたいというのが目標です。目先の売り上げや生産性も大切ですが、お客様が安心して、あそこに行けば絶対大丈夫だからと思ってもらえるサロンになるためにはどうすればいいのか、日々考えています。
弊社の代表とも、クリエイションとサロンワークの線引きはせずに、流動的に考えていきたいということはよく話をしています。『CARNIVAL』は、パブリックというか、一般女性の感覚を大切にするサロンだよねと業界内外から思ってもらえるサロンになりたいと思っているのです。
何のために、何をゴールとするのかを考えて
—若い美容師さんに向けてメッセージをお願いします!
僕もまだ33歳ですし、偉そうなことは言えないのですが、
私たちスタッフがいつも会社から言われていることで言うと、アクションのひとつ一つに対して、「何のためにやるのか」を考えなさい。そして「何をゴールとするのか」を設定し、そこから逆算して行動しなさいということです。
こういった思考を持つことは、美容師としての成長、デザイン、お店の売り上げなど色々な面で成長していくために必要不可欠なことだと思います。
自分自身、もっと成長していきたいと思っているので、いつも心に留めています。
COVER LOOK BY
kazu_CARNIVAL
HAIR/kazu(CARNIVAL)
MAKE-UP/chihiro(CARNIVAL)
PHOTO/Koki Okumura
kazu氏
都内4店舗を展開する『CARNIVAL』グループでクリエイティブディレクターを務める。理容師や都内有名店での経験活かし教育やブランディングを手掛けながら自身のクリエーション活動にも取り組む。2017年、MILBON DA INSPIRE にて初代DA oh the yearを受賞後、DA INSPIRE オフィシャル審査員として参加。2018年、2019年、Japan Hairdressing Awards NEW COMER OF THE YEAR部門、東京エリア部門にてファイナリストにノミネート。
http://carnival-tokyo.com/
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