美容師と地場産業がコラボをしたら、どんな化学反応が起こるのか。
第2回目は新潟県発。新潟市で2店舗を展開するサロン 『HURRAH』のクリエイティブディレクター、ヤマザキ ケンユウ氏と同市の蔵元『村祐酒造』の村山 健輔氏。
職人気質でありながら、既成概念にとらわれることなく 自由なものづくりをされているお二人だ。
村山 健輔 KENSUKE MURAYAMA(写真:左)
村祐酒造株式会社 代表取締役。1948年創業の村祐酒造三代目であり杜氏。東京農大醸造科の短期課程を卒業し、県外の酒造メーカーで一年修行。その後、実家の村祐酒造に入る。2002年、新たに立ち上げた主銘柄『村祐』は「和三盆のような味わい」とも評される。生産量は年間300石(1石=100升=180L)と希少。
ヤマザキ ケンユウ KENYU YAMAZAKI(写真:右)
HURRAH クリエイティブディレクター。サロンプロデュースからブランディング、雑誌、広告、セミナーなど既存の美容師の枠に収まらず多角的に活動。自ら運営、プロデュースするユニットLUNDI ZOMBIEZではnanuk山下氏、LECO内田氏、QUQU浦氏と共演。2019年 、JHAニューカマー部門ノミネート。
Hair_Kenyu Yamazaki(HURRAH)
Make-up_Ruki Matsushima(HURRAH)
Photographer_TAKUMA(studio Roop)
Model _Hinano Hoshino
Costume_little Suzie / Sasquatchfabrix.
Location_Murayu Shuzo
きっかけはカフェの酒造イベント
「村祐」は新潟市の誇りです
ヤマザキ 弊社の別事業でカフェをやっているのですが、そこで新潟の酒造を集めたイベントを開催し、村祐酒造さんにも参加していただいたのがご縁でしたね。同じ新潟市のブランドなので誇りに感じていますし、僕もお酒が好きなので今回、お声がけさせていただきました。
村山 最初は場所だけ貸せばいいのかと思っていたから、まさか対談まであるとは(笑)。うちは建物も古いし、人に見せるような設備もないからいいのかなと思っていたのですが、キレイに撮っていただき、ありがとうございました。
ヤマザキ 撮影前に見学させてもらった時、もともとは第二次世界大戦中、ワイン造りから始まっていて、それが国からの命令で戦争に使用する酒石酸※を作ることが目的だった。日本酒造りは戦後から始まったというお話を今日、初めて聞いて感動しました。僕らの会社はまだそこまで歴史がないので、長く続けられていることもすごいなと思いました。
村山 僕も聞いた話なのですが、結局、酒石酸の話は立ち消えだったそうです。でも、敷地内の土を掘ると昔のワインのラベルが出てきますよ。
※酒石酸…ワインに含有している酸。戦時中は電波兵器製造に使用
作品のテーマは「和」
そこに僕ららしいデザインを入れました
村山 ところで作品のテーマはあるのですか?
ヤマザキ 美容業界のクリエイションは、海外の雰囲気からインスピレーションを受けることが多いのです。でも、今回は酒蔵さんなので、ちょっと「和」を感じさせるようなテンションでヘアやコスチュームを考え、 そこに僕ららしいデザインを入れました。内装の所々がグリーンだったので衣装にもマッチし、そこにピンクのリップを入れることでグッとオシャレになったかなと思います。カメラマンのTAKUMAさんは地元で一緒にクリエイション活動をしている仲間。いつもワークショップなど色々な人を巻き込んでやっているので、今回も彼しかいないとお願いしたのです。
ローカルからの発信に大切なのは
自分にしかできない「ものづくり」
ヤマザキ 村山さんがお酒造りで一番大事にされていることは何ですか?
村山 昔は「飲む人のことを考えて」と思いながら造っていましたが、結局、味の感覚は人それぞれ。最近は自分で飲んで「美味しい」と思うものを造るようになりましたね。
ヤマザキ 新潟は淡麗辛口のイメージがありますが、村祐酒造さんのお酒はキレのある甘さが特徴ですよね。
村山 新潟に立派なお酒はたくさんあるので、同じようなものを造っていてもしょうがないかなと。東京の酒屋さんに「新潟の酒は全部一緒だ」と言われて、言葉は悪いですが業界に喧嘩を売るような気持ちで「これも新潟です」とタイプの違う甘口のお酒を造って持って行きました。自分の中の基準をわざと崩したお酒だったのですが、それが面白いと評価をいただくことになったのです。
ヤマザキ その気持ち、共感できます。僕も東京にコンプレックスがあったわけではないのですが、どうしても比べられてしまうので、同じことをやってもしょうがないという気持ちはある。ローカルから発信していく上 で「自分たちにしかできない」ということは常に大事にしています。
ヤマザキ氏のクリエイション作品
HURRAH
お客様の喜びを得るためには
地道なプロセスの積み重ねが必要
ヤマザキ お聞きしてみたかったのですが、日本酒は毎年、味に違いが出るものですか?
村山 毎年どころかタンク一本、一本が違いますね。キャリアを積んで大体の形は思い通りにできますが、細かいところは難しいです。米の味も毎年違いますし、その年によって硬い米だったり、溶けやすい米だったり。そうなると作りながら調整していく感じですね。でも、お客様は同じ味を求めるし、酒屋さんは毎年違うから面白いと言うし…。だから人の言うことは気にしないようになりました(笑)。
ヤマザキ 一般の方から見たら、美容師は華やかな職業に見られますけど、そこを掴むためにものすごく地味なトレーニングを積んでいて、なんなら、そのプロセスの方がウエイトは大きいと思います。技術がなければお客様は喜んでくれないし、お客様もつかないし、今回のようなクリエイティブの場面でも良い作品は作れません。お酒造りと似ていると言えば、似ているのかもしれないですね。
村山 美容といえば、酒づくりをしていると、皆、麹酸でだんだん肌が白くなっていくんです。生米の仕込みでは手が荒れてしまいますが、麹をいじるとしっとりします。
ヤマザキ え、そうなんですか!? 肌に良いのなら麹で作ったワックスとかシャンプーとかもいいかもしれない。コラボして作れたらいいですね。
村山 やりますか! 声をかけていただければ。
HURRAH
〒950-0088 新潟市中央区万代1-2-3コープ野村万代1F
https://www.hurrah-jp.com
村祐酒造株式会社
〒956-0116 新潟県新潟市秋葉区舟戸1-1-1
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