GAMO NEWSはおかげさまで100号を迎えることが出来ました。テーマは『Diversity=多様性』。
カバー&ヴィジュアルを手がけていただいたのは、日本のトレンドセッター『SHIMA』を牽引するアートディレクターの奈良 裕也氏です。老若男女、多国籍、多ジャンルのお客様を手掛ける氏の刺激的なクリエイションに注目!
奈良さんがイメージする「Diversity」とは
—テーマ「Diversity」からイメージしたことを教えてください。
記念すべき100号に呼んでいただき、ありがとうございました!イメージしたのは、ちょっと退廃的な雰囲気の女の子。ヘアショーは別ですが、僕はあまりごちゃごちゃしたクリエイションはリアリティがなくなってしまうので好きではないのです。髪は自然な感じで、3つのバージョンそれぞれ違う女性をクリエイションしました。
まず表紙のスタイルは「怒り・女の嫉妬」。髪はモデルさんが来たままの素の状態で、スタイリング剤すらつけていません。メイクもシンプルに仕上げています。2つ目(P2)のスタイルは「無機質、機械的、アンドロジナス」。髪はストレートでツヤっぽく、メイクはベージュ系マットな質感で無機質な感じに。3つ目(P3)のスタイルは「願い・祈り・おねだり」。髪はちょっとウェットにし、メイクもラメやグロスで濡れた感じの質感にしています。ファッションはシンプルなボディスーツにしてジュエリーだけ目立たせるように。前に染めて残っているカラーもいい感じだと思います。
表紙の作品
中面の作品(右)
中面の作品(左)
華やかな世界が好きで美容師の道へ
—奈良さんのルーツについて教えてください。
もともと華やかな世界が好きでした。子どもの頃、油絵を習っていて高校も美術系だったので、美大に進学しようかと思ったのですが、絵はお金にならないかもと考えてやめました。意外と僕は堅実なので(笑)。それで、美容系もファッション系も好きだったから、美容師がいいかなと思い、美容学校に行ってSHIMAに入社しました。母親も美容師免許を持っているのです。美容室に勤めてすぐ父がプロポーズをしたので、一年で辞めてしまったのですが、小さい時は髪を切ってくれていました。自由な教育方針の家だったので、両親ともに「自分のやりたいことをやりなさい」と美容師になることを後押ししてくれましたね。
—現在はヘア&メイクアップ アーティストとしても活動されていますが、クリエイション(撮影)はいつからされているのですか?
撮影は23歳ぐらいかな。まだ、デビューする前でした。先生(嶋 義憲氏)が来て「奈良ちゃんもそろそろ雑誌とかね…」と言った次の日に決まって。撮影は、めっちゃ緊張したのを覚えています。
外部のヘアメイクのお仕事を現在のようにメインでやらせてもらえるようになったのは遅くて、30歳ぐらいからです。ヘアメイクをやりたいということは、ずっと言っていたのですが、会社としては、サロンで一番売り上げのある美容師にはサロンワークをやってほしいという当然の考えから、「公休か自分の休みの日だったらいいよ」という感じでやっていました。でも、そんな都合良く、休日に(仕事は)入らないですよね。だから、サロンの売り上げと両立が出来るようにして、僕だけは自由にやらせてもらえるようになりました。後輩には道を作ったかもしれないですね。やっかいな道だと思うけど(笑)。
ヘアメイクの仕事は「人付き合い」から始まっている
—奈良さんのように海外のアーティストやセレブのヘアメイクを手掛けたり、コレクション等で活躍したいと思っても、アプローチがわからない美容師さんは多いと思います。
以前、「お金は要らないから、奈良さんについていきたいです」というヘアメイク志望の美容師さんが来て、お断りさせていただいたことがあります。
僕の場合はちょっと特殊。今、ヘアメイクをやっているSHIMAのスタッフも同じですが、友達やお客様(業界関係者)などから依頼をされる場合が多いのです。SHIMAはヘアメイクを前に打ち出している美容室ではないので、会社から振ってくることはないのです。
今回、ジュエリーで協力いただいたデザイナーの岩渕さんもプライベートで遊ぶ仲間なのですが、ヘアメイクの仕事はそういった「人付き合い」からですね。美容業界のコンテストなどで知名度を上げていくようなプロセスではないので、地方の美容師さんだと難しいかもしれませんね。
—草間彌生さんやレディー・ガガさんを担当するようになったのも、人との繋がりがご縁だったのですか?
そうです。草間さんの場合は、ルイ・ヴィトンのパーティーに呼ばれたことをきっかけにPRの方がお客様として来てくれるようになり、草間さんとルイ・ヴィトンがコラボをした時にヘアメイクを依頼していただきました。草間さんは、「地毛も赤くしたい」と言って、昨年、プライベートでもサロンに来てくださったんですよ。隣の席になったお客さんが驚かれていました(笑)。
ガガの場合は、彼女のスタイリストをしていたニコラ・フォルミケッティと友達で、YOSHiKO CREATiON PARiSのイベントをクラブでやった時に、デザイナーの梶谷好孝のヘアメイクをしたのをニコラが見てくれていて、来日時のヘアメイクを依頼していただきました。
リアルな街の流行を知っておきたいから、サロンワークは大切
—今、サロンワークにはどのくらいの頻度で立たれているのですか?
ヘアメイクや審査員、DJなどの仕事がない時は、可能な限りサロンワークをしています。ヘアメイクだけをしていると、感覚的に切れなくなってしまうので、やはり大切にしていますね。あと、サロンワークを通して、リアルな街の流行とかを知っておきたいというのもあります。ヘアメイクの現場だけ、サロンワークの現場だけではなく、色々なところを見て良いものを吸収したいと思っています。
90年代〜2000年代初めのファッションショーに影響を受けました
—インスピレーションはどのような時に湧くのですか?
90年代や2000年代初めのファッションショーが好きです。スーパーモデルが活躍した時代だと思いますが、その頃のショーはとても華やかでした。特にアレキサンダー・マックイーンとかディオール時代のジョン・ガリアーノが好きで、ショーの質やモデルの見せ方も良いので影響されています。
あとは、テーマによって、色々な文化などを調べたりもします。2019年のGAMOのヘアショーでは民族っぽい感じのスタイルを創りましたが、モンゴルやアフリカの民族やシノワズリ(ヨーロッパで流行した中国趣味の美術様式)が好きなので、イメージソースにしました。映画を観ることも多いです。
巻き髪の時代から今のSHIMAを創っていきました
—どのようにしてSHIMAという唯一無二なブランドの世界観を創り、牽引されてきたのですか?
僕が入った時のSHIMAは今みたいな感じではなくて、刈り上げとか金髪ショートみたいな時代でした。2000年半ばぐらいになって、先生が「時代は巻き髪です!」と言って。毎週火曜にオフィスに店長が集まり、先生と店長たちで戦いを繰り広げていました。でも、先生の言っていたことが合っていましたね。
そこでSHIMAも巻き髪の長い髪に看板(ヴィジュアル)が変わったのです。その一発目の撮影を任されました。先生が「次、時代が変わるから、奈良ちゃんでいこう」って。SHIMAの看板をいつかはやってみたいとは思っていたので嬉しかったのですが、アイロンを使ったことがなかったから、最初はジャンルは違うけどAFLOATの宮村さんのスタイルとかを見て必死に勉強しました(笑)。
でも、時代的にギャルとストリートがそろそろミックスする頃だなと思っていて、SHIMAっぽい巻き髪を創っていこうと思ったのです。愛され系やコンサバではなく、外国人よりの抜け感のある巻き髪で。一からだったので、巻き髪のマニュアルも作って。それが今の若いSHIMAのスタイリストたちに根付いているのです。
ヘアショーで異素材をエクステのように使ってセットをする手法は、サロンワークから生まれました。僕のお客さんでマリーアントワネットのように飾りをたくさん着けてセットをする方がいるのです。それをやっている時に先生が来て、先生はごちゃごちゃ髪につけるのが好きではないので「怒られる…」と思ったら、「いいね、奈良ちゃん、今度ヘアショーでやろうか」と言われたのです。そこから、色々着けてもオシャレにキマっていればいいんだなと思って、自由にやらせてもらっています。
デッサンを描いてイメージを共有します
—撮影の時にスタッフとどのようにイメージを共有されていますか?
カメラマンの佐野 方美さんとは、雑誌『ViVi』でも連載をやっているので、「こんな感じ」と言えば伝わりやすいのはあります。でも、自分のイメージを伝える手段としては、デッサンを描きます。女の子を描くの上手いですよ。最近、デッサンをする人は少なくなっていますが、絵をかけた方が絶対いいと思います。だって、上手いと説得力があるじゃないですか。以前、化粧品メーカーのイベントで4つのメイク提案を描いたら、そのままPOPに採用されたこともあります。
やはり、人をキレイにする仕事だから、字とか身の回りの所作もキレイな方がいい。そういうところに人間性が出ると思うので、気をつけています。
楽しく、自由に生きてほしい
—最後に若い美容師さんにメッセージをお願いします!
楽しく、自由に生きたらいいんじゃないのかな。結構、美容師さんってネガティブな人が多い。特に若い子は繊細だし。もう少し、大雑把に、大らかに物事を考えて、小さな失敗は気にしない。明日になればなんとかなるって思う、ボジティブな気持ちを持った方がいいと思います。ネガティブなことを考えるとそればかりになってしまうから。嫌なことは遊んで忘れて!僕は一昨日の夜、酔って携帯と財布なくしてしまったのだけど、明け方に気がついたけど、「どうせ、出てこないし、もういいや、寝よ」って、そんな感じです(笑)。
あと、「思っていたのと違った」っていうことがあると思うけど、楽しいことって待っているだけじゃダメなんです。自分から楽しくさせると良くなります!
COVER LOOK BY
YUYA NARA_SHIMA
HAIR&MAKE-UP/Yuya Nara (SHIMA)
PHOTO/Masami Sano (KiKi inc.)
MODEL/Mayben (BE NATURAL)
JEWELRY/Rumiko Iwabuchi (Bijou R.I /www.bijoou.com)
奈良裕也氏
SHIMA HARAJUKU アートディレクター/ヘアメイク。サロンワークをベースにファッション誌、業界誌やHAIR SHOWの他、ヘア&メイクアップ アーティストとして海外のアーティストやセレブを手掛け、カタログやコレクション等でも活躍中。また自身も東京のファッション アイコン的存在で撮影に参加するなど活動は多岐にわたる。
http://www.shima-hair.com
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