GAMO NEWS 101号のテーマは「Next Stage」。
カバー&ヴィジュアルを手がけていただいたのは、2020 KHAオフィシャル部門でグランプリを受賞された『Bead’s/NALLOW』の栗元 隆宏氏です。
今を生きる、私たちの心に響くメッセージを受け取ってください。
栗元さんがイメージする「Next Stage」とは
—テーマ「Next Stage」からどのようにイメージをされましたか?
コロナ禍で外出自粛が続き、皆さんの生活様式が変わっていった中で、自分のクリエイティブ撮影にも変化がありました。昨年から意識的に「前向きなスタイル」を撮るようになったのです。今回のテーマ『Next Stage』を聞いた時も想いは同じで、表紙は明るい印象で「次の一歩に進む」というイメージで創らせていただきました。
美容師仲間の作品を見てもそうですね。モノクロでもちょっと明るい雰囲気で撮ったりしているので、世の中全体的にそういう気持ちになっているんじゃないのかな。サロンワークでも普段やらないようなヘアカラーにチャレンジしたいお客様が増えています。こちらからも「気分を変えられますよ」と提案をしています。
今回の撮影は、前向きで新しいことにチャレンジしたいとカメラマンの森脇氏にも伝え、ドローンや多重露光を使った撮影なども提案してくれたので、とても刺激になりました。良い形での表現が出来たと思います。
表紙の作品
中面の作品(右)
中面の作品(左)
華やかな女性像、カット、カラー、メイクのポイント
—それぞれの作品についてポイントを教えてください。
<表紙の作品>
都会のオシャレな女の子というより、ローカルに住んでいて、家にこもっていることが多い女の子。そんな女の子が外の世界に出て、新たな一歩を踏み出し、次のステージに進むというイメージで創りました。
3つの作品は全てウィッグを使っていますが、これはマッシュスタイルのウェーブヘア。カーリーヘアの地毛に見えるよう、ヘアカラーは柔らかなオレンジを入れたベージュで表現しています。
メイクはいつもアシスタントの熊澤にお願いしています。メイクもバランスが大事だと思うので、僕から指示するというよりは逆に提案してもらうことが多いです。このスタイルのメイクは、顔にそばかすを足したりしてナチュラルに仕上げています。
<中面 右ページの作品>
モノクロの作品はメンズライク、ジェンダーレスな女性像をイメージして創りました。
テーマのキーワードの中に「新しいシルエット」というワードがあったので、今まで自分がやってこなかったシルエットを創りました。スクエアに見えるように切ったところがポイントです。
ヘアカラーは光が当たった時に柔らかく、透け感が出るようにしたかったので、ブルーの色を入れています。モノクロなのでブルーの色は出ませんが、ウィッグを被せた時に「わぁ、すごい!」とモデルさんのテンションが上がって欲しいので、いつもカラーで見ても、どの角度から見ても完成されたスタイルを創るようにしています。
メイクは、濃いリップなどを付けて強めのメイクをしてしまうと、全体の絵も強くなってしまうので、ベースはナチュラルに。ポイントで頬に四角い印のような印を入れて、「何これ?」みたいな、違和感のあるメイクにしています。
<中面 左ページの作品>
この作品は、コロナ禍でも、どんな時代でも変わらないものは何だろうと考え、「美の本質」をシンプルなボブで表現したいと思いました。王道のボブですが、動いた時に目の下や頬骨の辺りに出てくる毛束を創ってみたり、前髪は短くし、少しうねって広がるようにスタイリングしたことで、少し違和感を持たせています。
様々な色が入った力のある衣装に合わせて、ヘアカラーはインナーや後頭部の落ちてくるところにグリーンを足しました。
メイクは目頭にポイントで服の中にあるイエローを入れています。
“今の気分”と感じたフォトを常にストックしておく
—どのようにインスピレーションを得ているのですか?
Instagramや雑誌の広告をよく見ます。その時の気分で良いな、可愛いなと思った写真は、その年ごとにフォルダ分けをしてストックしています。過去のものを見直してヒントを得ることもありますね。デッサンも描きますが、人に見せて共有するというより、自分のイメージを固めるためです。撮影までは、テーマ→ヘアスタイル→衣装→ライティング→画角→メイクの順で決めていくことが多いです。
独立開業を機にクリエイションをスタート
—クリエイションはいつから始められたのですか?
クリエイションを始めたのは、菊川と店をスタートした11年前からです。スタイリスト3年目ぐらいの時ですね。右も左も分からないところから始め、ガモウさんや色々な方から勉強させていただきました。撮影セミナーにも行き、少しずつ自分たちのやり方に変えながら続けていき、昨年、10周年の節目の年にKHAでグランプリをいただくことができました。
サロンワークとクリエイションを切り離して考えてはいません。クリエイションをやるようになって、バランス感覚や構図を見る力が身につきましたし、クリエイションを通してものすごく多くの出会いがありました。それが一番大きいかなと思います。
顔と名前が一致しなくても、全国の美容師さんに「この作品知っています」「好きな作品です」と言っていただけますし、自分も同じで、気になる作品や美容師さんがいます。自分の仕事のメインはサロンワークですが、こうした作品を残していけるというのがクリエイションの面白いところだと思います。
クリエイティブ集団というほど尖った感じのサロンではないのですが、お客様にこういう活動もしていることを知っていただくというのは大事かなと思います。賞をいただいた時はものすごく喜んでくれましたし、気づけば色々なことにチャレンジされている意欲的なお客様が多かったのです。ダメな時は勇気付けていただくこともありますし、これからも互いに刺激し合いながら長いお付き合いが出来たらと思っています。
自分たちの背中を見て、クリエイションに取り組むスタッフも
—クリエイションはサロン全体で取り組んでいるのですか?
全員がクリエイションに取り組んでいるわけではありません。時間もお金もかかることなので興味があるスタッフだけです。自分たちの背中を見て「私もやってみたい」「クリエイションはカッコいい」と下の世代が思ってくれたら嬉しいなと思っていましたが、ようやくそういうスタッフが出てきました。クリエイションがやりたくて入社したスタッフもいますし、3年目になる熊澤と2年目のアシスタントも今年、KHAに出していました。
結果はどうであれ、やると決めて向かっていく過程が大事。気がついたら、自分がすごく成長していたり、やりがいに繋がるというのはあると思います。
フォトだけでなくTHAのように動画部門が新設されたコンテストもあるので、選択肢が広がってきているなと感じています。若い世代は、まずは自分たちの身近な表現手法でクリエイションをしてみたらいいんじゃないかな。
失敗から学んで得たものは最終的には自分のものになる
—若い美容師さんにメッセージをお願いします!
よく、美容師は好きなことを見つけてやったらいいと言うじゃないですか? 皆、すぐに好きなことを見つけようとするのですが、そんなすぐに見つけて行動できる人ってなかなかいないと思うんです。それが出来るのは一部の才能ある人で、アドバイスなどしなくても売れている。
だから、一般的な美容師さんに向けてメッセージをさせていただくのなら、「シンプルに楽しんでやったらいい」ということを伝えたいです。美容師はこうでなくてはダメとか枠を考えるのではなく、まず、楽しむ。
そうは言っても、自分が楽しくなったのって若い時じゃなく、10年ぐらい経った時からでした。経験を積んで引き出しが増えて、頭でイメージしたことが形にできると思った瞬間に「楽しいな」「もっと上手くなりたいな」という意欲が湧いてきたのです。
失敗しないように手っ取り早く「答え」を教えて欲しいと思う人が多いかもしれませんが、答えを言ったところで同じようには出来ないものです。自分で実際にやってみて、失敗して、本当の難しさが分かります。そこで「なんでだろう?」を追求していくと、好きが武器になっていくのかなと思います。
実は今日、モノクロのスタイルに入れたブルーのカラーもサロンワークでの失敗から生まれたものです。お客様が希望するブルーの色が出せなくて、自分に腹が立ち、キレイな色を出すために試行錯誤したというストーリーがあります。なので、今回、表紙撮影のお話をいただいた時に、今までクリエイションで使ってこなかったブルーやグリーンを使って表現したいと思いました。
失敗から学んで得たものは最終的には自分のものになる。
今、美容業界はカラー剤など商材もどんどん進化をしています。そういう意味で、頑張っている美容師さんはブレない軸を持っていながらも、ネクストステージに向けて、常に新しいことにチャレンジをしていると思います。
美容師はめちゃくちゃいい仕事だと思います。今、頑張ったらその先に楽しいことが待っていると思うので、自分の選んだ道を信じて突き進んでください!
TAKAHIRO KURIMOTO_Bead’s/NALLOW
HAIR: Takahiro Kurimoto (Bead’s/NALLOW)
MAKE-UP: Yuuka Kumazawa (Bead’s/NALLOW)
PHOTO: Takuya Moriwaki
COSTUME: NOVO K
栗元 隆宏氏
岡山県出身。グラムール美容専門学校通信科卒業後、Beads入社。サロンワークを中心にクリエイティブ活動をし、2018年10月、2店舗目『NALLOW』をOpen。現店長。2014 JHA近畿エリアノミネート、2016 SHISEIDO beauty innovator award ファイナリスト、2017 KHA オフィシャル部門 ノミネート、2020 KHA オフィシャル部門 グランプリ。
http://beads-ism.jp
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