落語家 柳亭小痴楽さん

Professional InterviewJul.20.2018

INTERVIEW WITH  RYUTEI KOCHIRAKU

古典落語に現代の笑いの感覚取り入れて

今、東京は寄席が熱い! 江戸時代以来とも言われる〝 平成落語ブーム〞が到来。テレビドラマ化も決定した漫画原作のアニメ『 昭和元禄落語心 中』のヒットもあり、ここ数年、若い女性を中心に20〜30 代のファンが急増している。首都圏では月に1000件を超える落語会が開催されており、落語家の数も東西合わせて約800名と、これまた江戸時代以降、最多記録。

客のお目当ては「二ツ目」という「真 打」の手前の階級にいる若手落語家たち。落語芸術協会に所属する二ツ目の落語家・講談師によるユニット『成金』も結成され、盛り上がりを見せている。そのメンバーの一人。次世代を担う落語家の中で勢いを感じさせるのが、柳亭小痴楽さん(29)だ。

若手落語家・講談師ユニットも結成

偶然にも落語の日(6月5日)にお会いした彼は、一見したところファッションやスポーツが好きなオシャレ男子。しかし、高座に上がれば渋めの着物を粋に着こなし 、江戸っ子が乗り移ったかのようなテンポ良い口調で古典落語を演じてみせる。「らしくない」感じとのギャップが良い。イケメンの若手落語家としてメディアに 取り上げられることも多いが、お客さんの大半が女性という現状に、当の本人は少々複雑な想いもあるようだ。

「ありがたいんですけど、元から来てくれていた年配の男性が来づらくなったなんて声も聞いたので。男性は良いと思っても行動を起こすまでに時 間が掛かる。でも女 性は行動力があるから良いと思ったら一人で も来るんですよね。そんな中、僕の落語会に『NHK新人落語大賞に出られた時の放送を見てすごいと思って来ました!』って同じ年の男性客が声を掛けてくれた時はすごい嬉しかったですね。あと、美容師さんもよく来られていますよ。 なんか今 時っぽい子が客席に混じっているなぁと思 ったら 、『落語を聞いたらコミュニケーションが上手くなるんじゃないかと思って来ました』と言うアシスタントさんもいたし、僕の落語が好きなお客さんと話しが合えばいいなと思って 来たら、今ではお客さんよ りハマってしまった美容師さんもいます」

成金旅にていつも全国を回っているメンバーと

親父の落語は聞いたことがなかった

五代目 柳亭痴楽の次男として落語家の 家に生まれた小痴楽さん。子ども時代は、無意識の反発心か、近くにあり過ぎたせいか「落語はおじいちゃんがやって、おじいちゃんが聞くものでしょ」と父親の落語ですら一切聞こうとしなかった 。しかし、人を笑わせる商売には就きたいと、お笑い芸人になる道を模索していたという。中三の時、たまたま CDデッキに入っていた、八代目 春風亭柳枝の『花色木綿』を聞き、その考えは一転した。

「三味線の音が聞こえて、あ、親父の商売か。聞いてみるかなと思ったら、まぁ面白くて。親父が帰って来るのを待って、俺、これがやりたいって」。高校を中退し、16歳で入門。父親と同じ道を歩くことを決めた。

高座に上がる時の着物一式です

 落語は聞くと勝手に頭が回転する

古典落語に出てくる登場人物は、だらしない、ずる賢い、失敗ばかりと必ずどこか愛嬌があって憎めない。時代関係なく笑え、共感できる部分もあるのが落語の魅力と話す。

「キャラクターがさっぱりしていて気持ちがいいし、悪者もそんなに出てこない。いい話聞いた、15 分間バカになれた、そういう息抜きが出来る。あと、落語は『仕込み 』の次に『だれ場』という 一 瞬 、仕込みを 忘れさせるようなどうでもいい話の時間がある。そこがクッションになって最後の『オチ』に持っていく構成なので、頭を使って聞くと言うより、落語を聞いたら勝手に頭が回転する。落語が本当に好きな人は、その感覚が楽しくて来ているんじゃないのかな 」

新宿 末廣亭前で撮影しました

落語家らしく、いい加減に生きていきたい

落語家になって14年目。順当に行けば 「真打」に昇進するまで、あと1年。

「古典落語の世界は崩さないように口調だけ守りながら、現代人の笑う『間』とか『感覚』を取り入れるのが自分の落語の スタイルなのですが、まだ満足は出来ていません 。桂 歌丸 師匠でも、最期まで「まだゴ ールしていない」と高座復帰を望まれていたぐらいなので、生涯修行の 世界なのだと思います。今後の目標ですか?  僕は仕事に真面目な人間じゃないから、落語家らしく、いい加減に生きていきたいですね(笑)」

Profile/柳亭小痴楽(落語家)
本名:沢辺勇仁郎。1988年12月、五代目 柳亭痴楽の次男として生まれる。2005年10月、16才の時、入門を申し出た途端に父が病に伏したため 、二代目 桂平治(現:桂文治 )へ入門「桂ち太郎」で初高座。2008年6月 、父(痴楽)の門下に移り「柳亭ち太郎」と改める。 2009年9月、父(痴楽)の没後の、柳亭楽輔(父(痴楽) の弟弟子)門下へ。同年11月、二ツ目昇進を期に「三代目 柳亭小痴楽」を襲名。その後、落語芸術協会の若手落語家講談師11人によるユニット「成金」を結成し、 現在活動中。2011年2月、「第22回 北とぴあ若手落語家競演会」奨励賞を受賞。2015年、2016 年と2年連続「NHK 新人落語大賞」ファイナリスト。

公演情報は、落語芸術協会サイト
https://www.geikyo.com
Twitter @kochiraku

 

≪ 寄席 ≫※『落語会』

・「成金寄席」毎週金曜 19:30開演
場所 :ミュージックテイト 西新宿店
金額:1000円※成金メンバー4人週変わり制

・「 渋谷らくご」 毎月第2金曜 ~ 5日間
http://eurolive.jp/shibuya-rakugo/

・「新宿 末廣亭 深夜寄席」2018年 8/18(土)21:30~23:00
場所:新宿 末廣亭 金額:1000円

≪ その他 ≫
NHKEテレ「落語ディーパ―」不定期放送
インターネット番組Schoo 毎週水曜日生放送

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