2027年に100周年を迎えるガモウ。この長い歴史は共に歩んできたメーカーさんなくしては語ることができません。中でも、今年新社長を迎え新たなスタートを迎えたミルボンとは、ガモウが関東で先駆けて代理店となった頃から、60余年のお付き合いがあります。両社にとって節目となる今、ミルボンの坂下秀憲社長とガモウの蒲生典子社長にそれぞれの目指すもの、また美容業界の未来について語っていただきました。
─おふたりが知り合われたのはいつごろですか?お互いの印象もお聞かせください。
蒲生:昔からお名前は存じ上げていましたが、徐々にお仕事をご一緒することが増え、ミルボンさんがmilbon:iDを始められる頃、弊社も今後のEC事業について検討している時期でもあり、いろいろと相談に乗っていただくようになりました。とてもお忙しい方なのに、レスポンスがとにかく早いんです。論理的で行動力のあるところを尊敬しています。
坂下氏:蒲生社長は業界の歴史にも非常に詳しく、多くの先人の方々と対話をされてきた事から、ルーツを大切にしながら、美容室や美容師さん、メーカーにも、長い時間軸でお付き合いをされる印象があります。また、常に判断軸は美容師さんにあり、「美容師さんの夢や興味をいかに支えていくか」という観点で、論理立ててストーリーを組み立てる方ですね。
蒲生:かつて共に取り組んできたことが、今、お互い社長になった時の核となる事業になっています。信頼関係を構築した上で社長同士として関われることを楽しみにしています。
コロナ禍後の変化を
ポジティブに受け止め
価値を高める施策を練る
─2023年は新型コロナウイルス感染症が5類に移行され、消費も上向きになってきた年だと思いますが、美容業界はどのような変化がありましたか?
坂下氏:2020年の4・5月は美容業界にとって本当に苦しい時期だったと思うのですが、2021・22年は健康・美容への意識の高まりもあり、徐々に盛り返すことができました。しかし2023年は一気に飲食や旅行への機運が高まり、美容にかける優先順位が少し落ちた印象がありました。
また、今後就業者数が減っていく中、物価も上がり、それを今後どう乗り越えるかが課題になると思います。モノに次いでサービスの値段も上がっていますから、美容室にとってそれはプラスにとらえてよい点です。さらに多様性が認められる社会になってきて、美容師さんの専門性が発揮しやすい環境になってきている。そこをどう活かしていくかが今後のポイントになっていくかと思います。
蒲生:坂下さんがおっしゃった通り、美容業界はコロナ禍で対面のビジネスについて困難はあったけれども、サロン自体は緊急事態宣言が弱まるたびにサロンにお客様が帰ってくるというのを何度も繰り返し、お客様をちゃんと持っているサロンは力強く営業できた感があります。お客様がサロンを頼りにしてくださっているという、お客様とサロンの関係を再認識できた時代でもありました。
ただ、対面を避けることが多かった3年の間に教育というものに空白が生まれてしまった部分はあります。スタッフ教育の軸が少し変わりつつあるのが2023年から24年にかけての変化と言えますね。
坂下氏:まさしくそうですね。弊社でも2020年以降に入社した社員は、社内研修で臨店講習などの勉強はもちろんするのですが、現場での場数というものが圧倒的に少ないんです。特にヘアカラーは経験を積むことで分かることも多いので、各支店で若手社員向けにヘアカラーの理解を深める勉強会を行っています。
─2023年の課題を踏まえ、2024年はどのような方針を立てていらっしゃいますか。
坂下氏:先ほど言った通り、これから就業者数減少=客数減少時代が始まります。就業者数の減少で人手不足になり、それに伴って人件費も上がる。「客数が減っても増収できるか」「コストが上がっても利益が出るか」、そういうシナリオが大事だと思うんです。そのシナリオとして、まずは「感動の連鎖を作る」。今までは複数のメニューをやることによって単価を上げていきましょうというやり方でしたが、これからは既存のメニューをもっと付加価値の高いものにしていくという考え方です。その具体策として打ち出しているのが「カミマユ」と「オーガニック」。一般市場ではパーソナルカラーやメイクによって眉の色を変えることもあると思いますが、ヘアカラーに合わせて眉の色を変えるという提案は美容室にしかできないことです。それを「カミマユカラー」というコンセプトでスタートさせ、美容師さんならではの提案、感動の連鎖を作っていきたいと思っています。そして「オーガニック」については、通常のヘアカラーより高単価でメニュー展開いただいているヴィラロドラ カラーが成功しているので、カラーだけでなく、ケア商品などを含めてご提案をしっかりつないでいく、ということをしていきたいです。
蒲生:コロナ禍以前を知らないスタッフも増えているので、単に前に戻そうとしてしまうとうまくいかないこともあります。ポジティブな意味で今の変化を受け止めて、どのように切り替えていくかを考えていかなければなりません。例えば私たちはフォトコンテストやカットコンテスト、スタジオセミナーやイベントなどを行っていますが、以前参加してくださっていた美容師さんは好意的に「待っていました!」と参加してくださいます。一方、参加経験のない美容師さんにとって、そういったリアルのコンテンツは時間もお金もかかるものだと端的に判断してしまうこともあります。ですので、その価値を理解していただくために、どうアプローチするか、また今の美容師さんにとって何が学びの糧となるのかという視点で内容の見直しを図っています。
坂下氏:時代に沿ってアプローチを変えていくことは大事ですよね。弊社も今後の美容業界を見据えた「今から始めて未来に備える取り組み」を行っていきたいと思っています。先ほどの「カミマユカラー」は今年に限ったことではなく、これを起点に美容師さんの可能性を拓いていくきっかけになればよいと考えています。まずは眉のカラーを提案し、それに合ったアイメイク、アイメイクが映えるファンデーション、それが映える肌作りのためのスキンケア、サプリ、美容器具など、美容師さんに優位性がある美容関連品を美容室で取り扱うというように広げていければと計画しています。
─2020年にスタートしたmilbon:iDの登録者が2023年末で67万に達したとのことですが、今後の展開はどのようにお考えですか。
坂下氏:現在milbon:iDの一オーダーあたりの平均商品購入の点数が2.9個、注文の単価が13,000円と高いパフォーマンスを持っています。今年はこのmilbon:iDを次のステージに進めるために2つの新しいサービスでアップグレードしていきます。1つは「スタイルストック」。これは美容室のサービスを受けた時に使用した商品の情報や写真、動画などがお客様ご自身のマイページに連携され、商品購入などの参考にできるというものです。もう1つは「ライブコマース」。これまでミルボン社員が実施してきましたが、この機能を美容師さんが自店のお客様向けに展開できるようにしていきます。
この2つの新しいサービスを加えたmilbon:iDを土台として、「スマートサロン戦略」でリアル体験のさらなる充実を図ります。美容室の価値を美容師さんからすべて伝えるには限界があるので、スマートサロンでは、お客様が自分からシームレスに商品体験をできる環境を整えています。昨年のテストマーケティングでは、日本全国の23店舗がこのコンセプトに賛同していただいてスタートしてくれているので、今年は100店舗ぐらいに広げていきたいですね。
蒲生:milbon:iDに関しては弊社もかなり力を入れています。営業でiD推進チームを組んで促進に努め、販売実績では約70社の中で1位となる成果を上げています(詳細は下図参照)。
美容業界の担い手として
共に成長し歩んでいきたい
─未来に向けて様々な取り組みをなさっていますが、5年、10年先の美容業界にどう貢献していきたいとお考えですか。
蒲生:私は美容というものは生活の中になくてはならないものだと思っています。ビューティーのアドバイザーになるような美容師さんがいてくれれば、生活は豊かになるし、美容師さんにはそういった力と魅力があると思っています。だからこそ、美容師という職業を選んだ人が仕事を通して豊かな社会生活が送れて、幸せを実感できる美容業界が私の考える健康的な業界で、そのための貢献という軸で、物事を考えるようにしています。微力ですが、そういうサポートを色々な面でできるような仕組みづくりや提案活動を今後も行っていきたいですね。
美容学生さんと美容学校を応援する「ミライビューティープロジェクト」もその想いから生まれたものです。コロナ禍を経て、やはり美容師という仕事は本当にいい仕事だと思っています。自分の仕事のスキル向上に伴い生活が豊かになり、さらに人に感謝される仕事というのは、時代にもマッチしていると思うんですよね。美容業界のエントリーとなる美容学校とサロンさんの橋渡しとして何か役立つことをしていこうというのが、このプロジェクトの目的です。
坂下氏:今の蒲生社長のお話に通じるのですが、ミルボンは「美容を産業にする」という目標を掲げています。「産業」というのは「社会のインフラになれるか」ということだと思うんです。美容室という業態が町々にある状態で、それが生活者にとってのインフラになるかどうかですよね。インフラになったら産業になったと言えるのではないかなと思っています。そのためには生活者が美容を通じてどう幸せになれるかが大事で、そこに美容師さんの新たな可能性は絶対にあると思っています。もちろん髪の毛を切る、髪の毛の色を染める、ヘアケアをする、これを本業とはしながらも、美容師さんからもっと広範囲な美容にまつわる提案をしていく。そういったことをガモウさんとミルボンと美容師さんが三位一体となって発信していくことで、美容室のあり方というのが生活者にとって変わっていく。そんな未来を楽しみにしています。
─最後にそれぞれ節目を迎えたお互いの会社に期待していることをお聞かせください。
坂下氏:事業経営では「潰れない会社を作る」ということが最大の目的だと思います。そう考えたとき、100年というのは1つの節目になろうかと思うんですね。ガモウさんが先陣を切ってそこを突破してくれることは、この業界的にとってはすごく明るいニュースです。そして、ナンバーワンディーラーとして、まだまだ開放されていない美容師さんの可能性の蓋を開放してあげる役割がガモウさんにはあるのではないでしょうか。製品や環境整備などで我々メーカーが手を取り合って、この蓋を開放していくことによって、美容師さんの未来を切り開いていって、さらなる次の100年へスタートする。そういう節目の100周年にしていただきたいなと思いますね。
時代の流れを掴みながら、お互いに歩調を合わせて、半歩ずつ新たな取り組みを協働していきたいと思います。そして10年後、過去を振り返った時に、結果的にイノベーションを起こせた、とお互いに評価できる日を楽しみにしています。
蒲生:それは大きなものを託されすぎです(笑)。一緒に頑張りましょう。私自身がガモウの四代目でミルボンさんが三代目になるんですよね。ミルボンさんとガモウは昭和の時代から創業期と成長期が近しい会社なんです。そのミルボンさんが企業の一番の課題である事業継承というものを形にして、次の世代にバトンタッチしたというのは、組織として積み重ねた功績と、とらえています。その企業化したミルボンさんが「美容業界を産業に」という言葉を掲げていらっしゃるので、この産業化する美容業界の担い手として、本当に役立てる企業として成長し続けられることを期待しています。そして、創業者の哲学は大切に継承しつつ、私たちガモウも未来の美容産業に向かって並走できる関係でありたいと思います。
PROFILE
株式会社ミルボン
代表取締役社長 坂下 秀憲(さかした ひでのり)氏
2001年ミルボン入社。営業で1年間ガモウの小山支店を担当後、商品企画室を経て経営企画室の立ち上げから5年間在籍し、2010年にミルボンUSAの社長に就任。2018年に帰国後、経営戦略部にてmilbon:iDの戦略設計を立ち上げる。2024年1月、代表取締役社長に就任。
座右の銘:過去に学び、未来に備え、今を生きよ。言い換えるならば今この瞬間からビジョンを生きよ。
『ザ・ビジョン』(ケン・ブランチャード著)の一節です。「ビジョンそのものも大事だけども、それ以上にビジョンを作っていくストーリーが大事」。つまり一人よがりで作るのではなく、社員と対話をしながら作っていくということを私自身も実践していきたいと思っています。
趣味はゴルフとサウナ。
株式会社ガモウ
代表取締役執行役員社長 蒲生 典子(がもう のりこ)
1997年、株式会社マンダム入社。1999年、ガモウに入社、2年間大学院で経営を学んだ後、ガモウでの仕事を本格的にスタートさせる。支店の開設速度が加速している時期で、企画担当という仕事が企画室になり、企画課、企画部、企画本部へと成長してい く過程を共に歩む。2007年・2009年の産休・育休を経て、2010年に仕事に復帰、2015年に取締役副社長に就任、2018年5月、代表取締役執行役員社長に就任。
座右の銘:前へ
ポジティブに物事をとらえることが大事だと思っているので、この言葉を上げることが多いですね。
趣味は読書と野球観戦。
2024年注目商品&トピックス
ミルボン
「Aujua」からスカルプケアシリーズの新ライン
「PRESEDIA」登場
年齢とともに髪の弾力が低下することで、根元からの髪のハリ・コシの変化や分け目の目立ちが気になる地肌の悩みに着目。根元から髪1本1本が立ち上がる、健やかな地肌へと導き、美しさを育みます。
“カミマユカラー”のキーアイテム
「im」の「ブロウ&ラッシュ カラーマスカラ」
鮮やかな発色が人気のマスカラは、眉毛とまつ毛の2WAYでご使用いただけます。グレーやベージュのベーシックカラーからピスタチオや赤味パープルなど全9色展開。
ガモウ
2024年5月にWEBオーダーシステムをリニューアル予定
2013年より『楽々注文ネット』のシステムを導入し、ファックス注文と併用しつつ、ゆるやかに移行を行っていました。現状のWEBオーダーシステムは実稼働件数9,062軒(直近1年間)、WEB受注比率68.0%(2023年12月1日現在)まで達しています。これまで8年ほどかけてどんな機能が必要かなどじっくり知見を貯め、それを活かせる開発を行ってきたので、ローンチを楽しみにしていただきたいです。
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