GAMO NEWS No.116 COVER LOOK interview 渡邉 理(kiitos)

Making Cover LookSep.24.2024

 GAMO NEWS No.116のカバー&ヴィジュアルは、北海道・東北エリアのクリエイティブシーンを牽引する注目美容師のひとり、渡邉 理氏が『Palette』をテーマにクリエイション。いずれの作品も3名のモデルを起用し、持ち味の色を駆使した表現で魅せます。絵作りの背景やサロンの垣根を超えてクリエイションに取り組む意義を伺いました。

『Palette』の上で足したり
掛け合わせることで
新しいものが生まれる

—テーマ『パレット』の第一印象と、どのように作品に落とし込んだのかを教えてください。

 まず最初に浮かんだのは絵を描くときに使う『パレット』です。そのイメージからカラフルにするのもありでしたが、GAMO NEWSのバックナンバーを見ながら試行錯誤しました。その結果、さまざまなタイプの人がいろいろな結びつきによって新しいものが生まれるというのが僕の中の『パレット』だと至りました。例えば赤と白を足したらピンク、赤と白と黄色を足したらオレンジになるように、足したり、掛け合わせ ることで新しいものが生まれるというイメージです。  その上で、今回ご一緒したフォトグラファーの 松山 優介さんとメイクの工藤 ゆかさんと打ち合わ せをしました。いつもとは違う作品にしたいという思いも強かったので、今という時代の空気感も汲んで多様性も含めて表現することにしました。

表紙の作品

—雰囲気の全く異なる3作品に仕上がりました。

 やるからには爪痕を残したいので、見せ方は色々と考えましたね。中面左ページの作品は全く違うもの同士が結びつくことって素敵だなと思ったことから発想しました。ムードの異なる3人のモデルの連鎖を、髪の毛を繋げることで表現しました。モデルは女性2人と男性1人でヘアはナチュラルに。

 3人とも肌のトーンが似ているのですが、その中でもヘアカラーは似合わせを優先しました。当初はオレンジやピンクも検討しましたが、真ん中のモデルさんは瞳の色や雰囲気にも合うと思ったので寒色系に。クールで無造作な印象に仕上げました。カラーはインパクトがありつつも、やりすぎないように意識してまとめました。

中面左ページの作品

 中面右ページの作品は、テーマ『パレット』のイメージを単色でシンプルに表現。ヘアだけでなく、衣装とトータルで色をきれいに見せたいと考えました。衣装スタイリストの川上麻瑠梨さんとはこれまでに何回か作品作りをご一緒していたので、僕の好きなテイストをよく分かってくれていて、ジャケットとヘアをいい感じに色をリンクさせることができました。表紙は『パレット』の上でさまざまな色が混ざり合うイメージ。透明感のあるモデルさんに、衣装はピュアな色みを取り入れて、純粋な心に宿るカラフルな感情を表現しました。ヘアデザインはもともとハイトーンのウィッグをさらにブリーチして、シルバーからベージュ系にベースを整え、ランダムに色をのせました。色白の肌と衣装の色に映える、ピンク、ブルー、紫をまさに絵の具のように自由な感覚でペイントしました。

中面右ページの作品

—俯瞰で撮影するというのもとても珍しいですよね。

 ヘアを美しくという意味ではあまり選ばれない構図かもしれませんが、『パレット』というテーマだからこそ自由に、人とは違う表現をしたいという思いがありました。結果的に僕自身が好きで、良いと思える仕上がりに着地できたのでよかったです。

—全作品で3人のモデルを起用することも挑戦だったと思います。モデル選びのこだわりを教えてください。

 モデルさんはメイクの工藤さんと惹かれる方を探しました。多様性やさまざまな人の存在を表現するためにもタイプの異なる3人に協力していただき、1人を男性にしたのは多様性を表現する上でも、絵的にも絶対に面白いと思ったからです。また1作品につき1人のモデルさんで作り込むことの方が多いので、今までにないことに挑戦したいという思いも強くありました。

 上手くいくかは分からなくても、クリエイションは極端に言えば「0か、100か」でいいと思っているんです。もちろん美容師として売上を立てなければなりませんし、サロンワークでは自分から提案することもありますが、お客様のご要望に沿ったデザインを提供することが基本です。対してクリエイションでは自分が思うがままに、とことん表現ができるんです。

自分が学ぶだけでなく
北海道でクリエイションの輪を広げたい

—そもそも渡邉さんがクリエイションを始めたきっかけを教えてください。

 前サロンで働いていたときに、クリエイションをしている関西の友人に刺激を受けて、社内で広めようと思ったのがきっかけです。なので「kiitos」をオープンして今年で10年目になりますが、クリエイション歴でいうと12年ほどです。

—それほど長い期間クリエイションに打ち込み続けているのはなぜですか。

 やはりとても勉強になります。クリエイションを続けているうちに、デザインの細部にまで目が行き届くようになりました。撮影をしているとモニターで細かい部分までチェックされ、毛束1本1本にこだわる必要があります。クリエイションを始める前は、なぜそれほどまでに細部にこだわらなければいけないのか疑問でした。けれどもそのこだわりが写真を撮ったときに、作品やスタイルの良さにつながるということが今では分かります。さらにはこのこだわりによって、サロンワークが上達していった感覚もあります。1人のモデルさんに対してなんとか魅力を引き出そうと時間をかけて向き合う経験を積むことで、お客様に対してもより似合うスタイルが導き出せるようになったと思います。

 加えてクリエイションをすることでファッションを学び、トレンドにも敏感になります。美容師であればお客様にトレンドを聞かれることも多々あると思います。そんなときにおしゃれを提供する美容師がきちんと答えられないのは悲しいですよね。そういった面でもプラスになるので、絶対にクリエイションに取り組んだ方がいいと思っています。

—渡邉さんはサロンの垣根を超えて、撮影や勉強会を主催していますよね。東北・北海道エリアのクリエイティブシーンは盛り上がっていますか。

 クリエイションをきっかけに仲良くなれた友人がたくさんいます。僕がクリエイションを始めた当初、なかなか上手くいかず四苦八苦した経験から、北海道エリア外の著名な美容師さんに来ていただいて勉強するようになりました。自分が学ぶだけではもったいないし、せっかくなら興味があるという美容師さんと一緒に上手くなりたいと思いました。2018年に『JHA』でエリア賞を受賞したことがきっかけで、その輪はさらに広がりました。北海道の若手美容師さんに新しいものを見せたいですし、今回の撮影もそうですがクリエイションをしていることで新たな出会いが生まれ、刺激になります。クリエイションを継続し、仲間と取り組む理由は一つではなくて、色々なことが原動力になっているんです。

—最後に今後の目標を教えてください!
 クリエイションを続けているからには、「JHA」の大賞部門でグランプリを取りたいです。また北海道全体のクリエイションを盛り上げて、美容師さんの輪を広げていきたい。さらには、さまざまな理由で仕事から離れる美容師も見てきたので、美容師の仕事が素敵で魅力的だと思ってもらえるように発信していきたいです。

COVER LOOK BY
kiitos_Tadashi Watanabe
MAKEUP:Yuka Kudo
PHOTO:Yusuke Matsuyama(CHIYODA STUDIO)
COSTUME:Maruri Kawakami
MODEL:EIYA, coyo, ryo

渡邉 理氏
1977年、北海道出身。北海道美容専門学校卒業。札幌市内1店舗を経て、2014年に『kiitos』をオープン。16年「WELLA トレンド ビジョン」ジャパンファイナル ノミネート、18年「JHA」北海道・東北エリア賞受賞、20年 「JHA」NEWCOMER OF THE YEAR ファイナリスト、22年「JHA」SALON TEAM OF THE YEAR ファイナリスト、23年「ホーユー プロフェッショナル カラコレ」クリエイティブ部門グランプリなど、コンテストでの受賞歴多数。
@tadashi.watanabe_

〒062-0051 北海道札幌市豊平区寒東1条7-1-7 
TEL:011-312-8034

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