GAMO NEWS、今号のテーマは『New Era(新時代)』。
カバー&ヴィジュアルを手がけていただいたのは、SANRIZZ LONDONのグローバルアンバサダーでもあり、福岡で2店舗を展開されているfabric代表のSHOGOさんです。令和時代の幕開けを飾るクリエイションをお楽しみください!
SHOGOさんがイメージする「New Era」とは
—テーマ「New Era」からイメージしたことは何ですか?
自分の作品を創る時は、大きなテーマを初期の段階で決めて取り掛かる事はあまりありません。しかし、New Era (新時代)がテーマと言うことで、年号も令和に代わり、新しい何かが始まりそうな雰囲気が社会にあると思います。そこでいつもとは違うアプローチで作品を創作し、作品ごとにblindness(盲目)、worried(憂鬱)、passion(情熱)のイメージで取り組みました。
美容業界のトレンドは少しウェットルックのウェーブ系が続いていますが、私は現代のヘアデザインのベースはサッスーン時代からのボブ、ショートボブの形が源流になっていると思います。
そこで時代の「節目」に基本に立ち返り、自分流にボブに変化をつけることを考えました。作品は形そのもの、インターナルシェイプに重きをおいて創り、360度どの角度からでもバランスが良い作品を、そして自分の特徴を出すようカットラインのメリハリ、シェイプ重視、カラーはカットラインを引き立てる配色で創るよう心がけました。
表紙の作品
中面の作品(右)
中面の作品(左)
作品を創る時、一番重視しているのは「形」です
—作品創りで大切にされていることは?
一番に「形」、そしてバランスを重要視しています。ウィッグでも、人頭で地毛をカットする場合でも、直感と瞬発力で切り込むようにしています。また、ウィッグの場合でも後から良い部分を貼り付けるとか、写らない部分はカットしないということはしません。
僕の作品撮りは、写真を撮りたいというより、自分が創ったヘアスタイルを記録するために写真を撮っているという意味合いが強いのです。だから、今回の3点もそうですが、お客様と同じようにフルカットをして360度、どこから撮られても大丈夫というヘアスタイルというのが絶対に重要なのです。
また、今、日本のトレンドはこうなっているから、こういう質感やディティールの方がコンテストや美容雑誌にウケるんじゃないか、といったことは私の場合はクリエイティブな作品づくりにおいてあまり重要視しているポイントではありません。
なぜならば、日本で流行っている質感やディティールを意識した作品を創り、それを海外の人に見せても評価してもらうことは難しいからです。しかし、形が「美しい」「カッコいい」は、時代が変わっても、どの人種が見ても万国共通で良いと思える、普遍的なものだと思います。僕のクリエイションやヘアスタイル作品が海外で評価していただいているのも、そこが理由なのではないかと考えます。
日本で発表する場合もスタンスは変わりません。日本であまりウケなかったとしても、一定数の人は共感してくれるはず。当サロンの広告も長年、クリエイション作品を打ち出すことで成功しています。奇抜で非日常的なスタイルであっても、形が圧倒的にカッコいいとか、そこに至るまでの技術力が、他のサロンにはマネできないだろうというところまで到達していれば一般の方にも響くと思っています。
クリエイションは自分のこだわりを100%発揮できる場所
—いつからクリエイションに取り組まれているのですか?また、クリエイションとサロンワークの違いは?
ロンドンでは『サスーンアカデミー』で一年間学び、その後イギリスのトップサロン『SANRIZZ』に入り、オーナー宅で住み込みをしながら修行をし、トップスタイリストまでいきました。そこでは、どうやったら売り上げが一番になるのかをいつも考えていたので、クリエイションよりもカットの理論や技法を研究することが主でした。
ただ、その中でも年に2回、サロンのニューラインを創ることは決まっていましたので、クリエイションは仕事の一環として習慣化はしていました。でも、それはサロンのための撮影であって、今、自分が行なっているクリエイションとは意味合いが違いますね。
僕はクリエイションとサロンワークは分けて考えるタイプです。
実はロンドンに行く前、お客様に対して髪の毛1本、最後の仕上がりまで自分のこだわりを全面に出してサロンワークを行なっていました。今、思うとお客様も迷惑に感じる部分があったでしょうし、サロンの中でも、回転率や売り上げも含めてバランスが悪かったのです。
帰国後は、自分はある程度引いて、お客様の望むイメージに寄せて、そこに自分の色やこだわりを少しプラスする程度に。そのプラス部分で他の美容師さんとの違いを出す感じにしています。
一方、クリエイションは100%自分でなければならないので、今、自分の中でカッコいいと思っているもの、やって見たいと思っていることを全て出すことができます。自分のためにクリエイションに取り組むようになってから、フラストレーションも解消され、サロンワークとのバランスが取れるようになりました。だから、コンテストのため、雑誌掲載などのために創るだけでなく、クリエイションは美容師としてバランスを取るためにやっているという意味合いが強いですね。
仲間に「負けられない」という危機感は常に持っている
—クリエイションはこれからも続けていかれますか?
ずっと続けていくのではないかと思っています。
他の美容師さんはどうかわかりませんが、クリエイションは産みの苦しみがあるので、僕は楽しいと思ったことはありません。でも、創った後の達成感はあります。しかし、一つ作品撮りが終わり、少し経つともう過去のものとして古く思えてしまうのです。だから常に創り続けていないと落ち着かないのです。世界中にライバルのような仲間が多くいるのですが、毎週のようにフェイスブックに新作をアップしているので、「負けられない」という危機感はいつもあります。
また、クリエイションの経験を重ねていくことで、自分は進化し続けていると感じます。ロンドンでは、名だたる人と仕事をしているようなフォトグラファーと組むことも多く、彼らは自分のクレジットが入る作品などは非常にシビアで、「バランスはこうした方がもっと良くなる」など助言をしてくれるので、一言一言が勉強になります。
今回の撮影チームは、フォトグラファーの森さんとは3回目。スタイリストの藤崎さんは美容雑誌でご一緒してからロンドンの撮影で衣装をお借りすることも多く、メイクアップを担当した、妹は撮影やセミナー系の仕事で一緒にやる機会が多いです。僕はイメージを伝えることしかできませんが、あまり細かく伝えなくてもイメージを拾ってくれる専門家たちなので、撮影はとてもスムーズでした。
その場所でじっと待っているだけでは何も得られない
—若い美容師さん、全国で活躍されている美容師さんにメッセージをお願いします。
自分の作品を発表する機会のない方、趣味の範囲だけでクリエイションをやられている方。特に地方のサロンでなど悶々とされている美容師さんも多いと思います。
色々なやり方があると思うのですが、自分で試行錯誤しながら、とにかく挑戦し続けることが大事なのではないかなと思います。例えば、作品を雑誌に掲載してほしいという希望があるのなら、編集者に1、2回断られたとしてもめげずに継続して作品を見せに行くとか。
コンテストであれば入賞するために傾向と対策などを考えるだけでなく、自分の色(オリジナル)を追求した作品で挑戦する。色々な美容師さんとの競合の中で審査されるわけですから、パッと見た時に誰の作品かわかるぐらいの個性を最終的に探して行ったほうがいいと思います。特に地方であれば、なおさら意識した方が良いと思います。
東京には、物量や人の数ではどうやっても叶わず、撮影スタジオにしてもフォトグラファー、モデルも良い人材が集まっています。また、雑誌も東京のトップサロンと組んでファッショントレンドを生み出していることが多いので、一般女性が求めるヘアのトレンドも東京が中心になるのは仕方がない。いつまで経っても東京の方がいいよねという話になる。だから、トレンドの質感やディティールを追うのではなく、自分の色を探して勝負していく。
当サロンも九州の都市からはかなり離れたところあるので、行きたい場所、見たいもの、いいものが遠くにあるのなら自分が動くしかないと思っています。地方でじっと待っていても、人との出会いもないし、何にも繋がりません。
フットワーク軽く、東京もロンドンも隣町に行く感覚で動いています。SNSで繋がるだけじゃなく、自分が動いて色々な人と知り合うことによって、色々なアイデアが得られるし、とんでもない出会いもあると思います!
COVER LOOK BY
SHOGO_fabric
HAIR/SHOGO(fabric)
MAKE-UP /MADOKA IDEGUCHI(fabric)
STYLING/KOUICHI FUJISAKI
PHOO/ YUTAKA MORI
衣装:HIROKO KOSHINO、グローブ:スタイリスト私物
SHOGO井手口 庄吾
イギリスのトップサロンSANRIZZ(サンリッツ)の歴史において未だに破られていない技 術クオリティー最高得点を獲得。代表のトニー・リッツォ氏より認められ、トップスタイ リストとしてロンドン、ケンブリッジにおいて勤務後、現在は福岡に2店を展開するfabric代表を務め、SANRIZZ LONDONのグローバルアンバサタダーでもある。2014年、AIPPワー ルドへアドレッシングアワード コマーシャル部門 世界第3位、2018 international BEST OF THE BEST Awardsグランプリ(世界第1位)など国外での経歴の他、国内においてはJHAの最高峰、大賞部門にて2017、2018年とファイナリストに選出されている。自身の作品コレクションは世界の美容誌、サイトで発表され、世界最大手ESTETICA誌の表紙へ4度選出されるなど、今までに見ない日本人美容師としての評価を受けている。
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