GAMO NEWS、今号のテーマは『TOKYO CHIC』。
カバー&ヴィジュアルを手がけるのは、東京ヘアドレッシングアワーズ 2019 リアルデザイン部門でグランプリを受賞された堀江 昌樹氏(JENO)です。
絶妙なバランス感で表現されたTOKYOリアルファッションを感じてください。
堀江 昌樹氏がイメージする「TOKYO CHIC」とは
—テーマ「TOKYO CHIC」からイメージしたことは何ですか?
美容歴は17、18年になりますが、昔は足して足してというプラスのデザインをしていました。ですが、3年前にTHAでグランプリ、準グランプリをいただき、翌年に「JENO」をオープンしてからは、引き算したマイナスのデザインに魅力を感じるようになったのです。クリエイションをする時は、時代性を感じながらヘアデザインを写真に落とし込んでいますが、今はあまり頑張り過ぎないとか、ちょうどいい抜け感といった足し引きのバランスを大切にしたデザインが東京にフィットしていると思います。僕の中でクリエイションとはコンテストで賞を獲ることがゴールではなく、いかにサロンワークで目の前のお客さんに喜んでもらうかを重要としています。クリエイションで経験した前髪の1ミリとかフォルムのこだわりがサロンワークに活きてくる、そのルーティン。今回は、サロンワークの延長線上にある表現として、東京にいる一人の女性の日常のワンシーンが撮れたらと思いました。
表紙の作品
中面の作品(右)
中面の作品(左)
引きと寄りではスタイルの見え方が違う
—カラー・カット・スタイリングのポイントを教えてください。
2セクション、2ブロックでカットしたハンサムショートで、90年代に流行したようなヘアスタイルを今風にアレンジしました。
ヘアカラーは、ブリーチしてから中野製薬さんと一緒に開発したキャラデコの2019秋冬のトレンドカラー「ノーブルモーブ」という旬のカラーを使用し、5レベルでトーンダウンさせています。
スタイリングのポイントですが、写真の場合、「寄り」と「引き」の構図ではスタイルの見え方が違ってきます。寄りだと髪の毛1本1本といった細かいディテールに目がいきますが、引きの場合は、(今回は特に暗い髪色ということもあり)フォルムに目がいくので、肌の見える面積や洋服のサイズ感とバランスを合わせて質感などを調整していく必要があります。今回はその可能性を見ていただきたく、3ポーズあえて同じスタイルにしました。
メイクはモデルさんの素材が良かったので、表紙はプラスしないでほぼリップだけ。ジャケットを着ているカットでは、トレンド感のあるカラーをプラスしたメイクにしています。
ネイルやシューズは写らないこともありますが、指先から足先までしっかりデザインするということはいつも大切にしています。そうすることでモデルさんの気分も上がるし、いい表情が出ると思うんですよね。
一瞬一瞬のチャンスを逃さないようにしています
—撮影チームとは作品のイメージをどのように共有していますか?
僕は、デッサンを描いたりすることはあまりしないんです。
モデルさんがどこまで切らせてくれるか、あとは似合わせでヘアデザインを直感的に決めています。
今回は、普段のサロンワークで切っているようなスタイル。スタイリングでどうこうするのではなく本当にラフな感じで仕上げているので、あとは写真としての完成度にかかってきます。
基本的にクリエイションの撮影は松山さんにお願いしているのですが、もう10年近く一緒にお仕事をしているので、事前にあまり細かいことは決めたりしません。今回のテーマを松山さんに伝えたところ、スタイリストは麻瑠梨さんが良いんじゃないかとアドバイスをいただき、何回かセッションをしたことがあるので安心してお任せしました。
後は当日の現場でのフィーリングですね。どこにチャンスがあるかわからないので、一瞬一瞬の偶然を大切にしています。
前回、THAでグランプリをいただいた作品も松山さんに撮っていただいたのですが、その場で「風を吹かせてみよう」となってあのデザインが生まれたし、今年グランプリをいただいた作品も着ていた服を「脱いだ方がいいかもね」、ヘアスタイルも「違うスタイリングでやってみよう」とその場のフィーリングで、最初のスタイルとは180度ぐらい変えた感じになりました。
TOKYO HAIRDRESSING AWADS 2019
リアルデザイン部門 グランプリ作品
昔からレオナルド・ダ・ヴィンチの「seize the fortune by the forelock. (幸運の女神は、前髪しかない)」という言葉が好きです。
チャンスの女神には前髪しかないので、向かってくるときに掴まなければならない。通り過ぎてから慌てて捕まえようとしても、後ろ髪がないので掴むことが出来ないと言う意味なのですが、僕も常にアンテナを張っていないと、いつどんな仕事が来るかわからない。
「今だ!」という瞬間を逃さないようにしたいなと思っているのです。今回は晴天に恵まれて、朝のいい光がスタジオに差し込んでいたので時間勝負でした。そういったスピード感は大事にしたいですね。
撮影もサロンワークもチームワークとコミュ力が大切
—クリエイティブワークとサロンワークに共通点は感じますか?
クリエイティブの撮影では、松山さんのカメラとか、麻瑠梨さんのスタイリング、メイクをやってくれたスタッフやアシスタント、皆の力があるから一枚の良い作品を創ることが出来ます。
サロンワークでもシャンプーをしてくれる、カラーをしてくれるスタッフがいて、皆でチームワークとして一人のお客様のヘアデザインを創っていると思っているので、たくさんの人とセッションをしながら一つのデザインを創るのは同じこと。それを違う現場でやっているだけのことだと思います。
そして、僕がデザインを創る時に一番大事にしていることは、“コミュニケーション力”です。会話のキャッチボールで楽しい空気感を現場に作ること。そうするとモデルさんもお客さんも良い表情になる。皆、撮影とサロンワークを切り離して考えがちですが、全部一緒なんだと思います。
クリエイションは、創るプロセスにこそ意味がある
—今回のTHAで2度目のグランプリを受賞されたわけですが、今後も挑戦はされますか?
もちろん来年もTHA、JHAはチャレンジしますよ!
僕は、昔からファッションや芸術、音楽が好きで、クリエイションをする時は、そういうところからデザインの発想を得ています。なので、常にクリエイションをやらなくなるとデザイン力とか感性が落ちて、普段のサロンワークでオシャレなものとかが出なくなってしまう気がするんですよね。
クリエイションは、自分の技術や感性を創造していく「過程」に意味があって、そのためにトライする場所(コンテスト)があると思うのです。
だから僕は、コンテストのために「傾向と対策」などはしたことがないですね。業界誌も今、どういう流れになっているのかなという視点では見るのですが、人がデザインしたヘアスタイルからアイデアを得ることはしないようにしています。むしろ、人とは違うものを創りたいと思うので。
好きなことを自由に思いっきりやればいい
—JENOのスタッフもクリエイションをしていますか?
サロン内でも撮影しますが、強制はしていません。皆、自分のしたい表現をすればいいんじゃないかというぐらいの感覚です。今日、参加してくれたのはクリエイティブに興味があるスタッフで、高野はヘアメイクの仕事をしていきたいと考えています。
ある程度、経験をしたら、それぞれ色々なことに興味が出て来ると思うので、彼らに向いているものを伸ばしてあげたいという気持ちはありますね。
僕は、アピッシュに入る前からクールでエッジが効いたものなどモードが好きでしたが、入社当時、周りは可愛いスタイルを創っていました。
でも、こう言うデザインを創れとは言われず、自由に伸び伸びと育ててもらえたので、可愛いとモードのバランスが取れるようになり、幅広いデザインが創れるようになったので、JENOのスタッフにも伝えていきたいと思います。
若い美容師さんに伝えたいことは、時代は変わっていくし、これからの表現は皆さんが創っていくもの。だから、自分が好きなこと、やりたいことを思い切ってやればいいと思います。
僕も自分がいいな、創りたいなと思っているものが、たまたま評価していただけているのはとても有難いこと。最終的にはお客様が決めるものなのかもしれませんが、表現に何がいいか悪いかという答えはないと思います。
自分が大事にしているものを大切に、ブレずにやり続けてください!
COVER LOOK BY
MASAKI HORIE_JENO
HAIR/ MASAKI HORIE (JENO)
MAKE-UP/KOTOMI TAKANO(JENO)
FASHION STYLING/MARURI KAWAKAMI
PHOTO/YUSUKE MATSUYAMA
カバー・P3:スウェットPORTVEL(STUDIOFABWORK/03-6438-9575)、リングPALA (HouseofPala/03-4400-7098)
P2:ジャケット、パンツKazukiNagayama(STUDIOFABWORK)、リングPALA(HouseofPala)
堀江 昌樹氏
1981年5月17日生まれ、滋賀出身。apish統括クリエイティブディレクターを経て2017年社内独立し、「JENO」代表に就任。リアルからクリエイティブまで幅のあるデザインに定評がある。2016THAリアルデザイン部門 グランプリ、クリエイティブ部門 準グランプリ。2019年、THAリアルデザイン部門 グランプリ。JHAノミネート多数。美容業界にとどまらず他業種とのコラボイベント「+ JENO」を定期的に開催し美容室の新しい価値を高めている。
https://jeno.jp
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